「相続」では、家族全体が同じ方向を向いて手続きしなければならない場合も多々あります。家族仲がよければ一つの問題もなく、手続きを進められることもあります。しかし、相続が開始する前から兄弟姉妹間の感情的対立が大きくなっている場合など、トラブルになりやすいケースも珍しくはありません。この記事では、このような場合で弁護士を活用する方法について見ていきましょう。
目次
同居していた側に対して預金の使い込みをしていたと主張するケース
兄弟・姉妹間でよくある相続トラブルとは?
相続トラブルと聞くと、テレビドラマなどの印象から富裕層で発生するものだと思われる方もいるかもしれません。しかし現実に目を向けると、相続トラブルは「相続財産5,000万円以下」のケースが大半を占めています。
具体的には遺産分割調停事件の3割程度「相続財産1,000万円以下」、4割程度が「相続財産1,000万円超〜5,000万円以下」のケースを占めているのです。もちろん富裕層でも相続トラブルは発生しますが、やはり相続財産が多い家庭ほど、生前から何らかの対策をしていることも少なくありません。また、富裕層でトラブルになりやすいのは「相続税」にまつわることであり、兄弟姉妹間の関係が問題になるケースは多くありません。
その一方、一般的な家庭は「相続させるほどの財産はない」といった考えから、相続対策を何もしていないことがあります。このような家庭で、相続開始前から兄弟姉妹間の関係がよくない場合、相続発生と同時にトラブルに発展する可能性が高いです。具体的なトラブル例としては、次のような例が挙げられます。
- 長男がすべての財産を取得すると主張するケース
- 不動産の分割方法が決まらないケース
- 疎遠だった兄弟が相続分を主張するケース
- 生前贈与があったと主張するケース
- 寄与分の請求ができると主張するケース
それぞれ詳しく見ていきましょう。
長男がすべての財産を取得すると主張するケース
そもそも相続財産は、どのように分配するのでしょうか。遺言書が残されていない場合、原則として遺産分割協議によって分配方法を決めます。遺産分割協議とはすべての相続人による話し合いのことで、全員が合意すれば、好きなように遺産を分配できます。
ただし民法では、相続人が2名以上いるケースにおける、各人の相続割合の目安が定められています。いわゆる「法定相続分」です。法定相続分は、相続順位や相続人の数により次のように変動します。
法定相続人(故人から見た関係) | 法定相続分 |
配偶者のみ | 配偶者:すべて |
配偶者+子(孫) | 配偶者:1/2 子(孫):1/2 |
配偶者+父母(直系尊属) | 配偶者:2/3 父母:1/3 |
配偶者+兄弟姉妹(甥姪) | 配偶者:3/4 兄弟姉妹(甥姪):1/4 |
子どものみ(孫のみ) | 子(孫):すべて |
父母のみ | 父母のみ:すべて |
兄弟姉妹のみ(甥姪) | 兄弟姉妹(甥姪):すべて |
子や直系尊属、兄弟姉妹がそれぞれ2名以上いる場合は、上記の割合が均等に分けられます。たとえば、被相続人の子ども3人が相続人となる場合、それぞれの子の法定相続分は1/3です。ただし、この法定相続分は、相続人同士の話し合いで遺産分配方法を合意できなかったときの持分です。そのため、必ずしも上記の割合で遺産分割しなければならないわけではありません。先述した「被相続人の子ども3人」が相続人となるケースでも、話し合いがまとまりさえすれば、長男がすべての財産を取得することも可能です。
しかし、法定相続分で持分が認められている以上、長男以外の兄弟・姉妹も、自分の持分を相続したいと考えることが多いでしょう。そのような感情を無視して長男がすべての財産を取得すると主張すると、相続トラブルに発展してしまう可能性があります。
不動産の分割方法が決まらないケース
さて、被相続人の子ども達が法定相続分の割合に従って相続すると決めても、不動産の分割方法が決まらずにトラブルになることもあります。たとえば、「被相続人の子ども3人」が1/3ずつ相続すると決めたとしましょう。しかし、財産の大部分を不動産(マイホームを含む)が占めていた場合、不動産を物理的に3等分することはできないため、何らかの方法で分配しなければなりません。不動産を含む相続財産を分割する例は、次のとおりです。
共有 | 相続割合に従って不動産を共有する (各人が持ち分を所有する) |
現物分割 | 「特定の財産」ごと、特定の相続人が相続する (長男は不動産、次男は預貯金など) |
換価分割 | 不動産を売却し、売却金を相続割合で分配する |
代償分割 | 不動産を相続する相続人が、他の相続人に代償金を支払う |
もし共有とすると、不動産の売買・建て替えなどの意思決定が複雑になり、次世代の相続人の負担となる可能性が高いです。兄弟姉妹間で感情的な対立が大きくなっているような場合は、共有は可能な限り避けたほうがいいでしょう。
しかし、兄弟姉妹の考えが違うと、現物分割・換価分割・代償分割のいずれで進めるのか、方向性がまとまらないこともあります。分割方法が決まらなければ遺産分割協議が成立せず、結果として相続トラブルになる可能性もあります。
疎遠だった兄弟が相続分を主張するケース
先述したとおり、遺産分割協議はすべての相続人が合意しなければ成立しません。そのため、たとえ疎遠な兄弟姉妹がいるとしても、連絡を取って協議に参加してもらう必要があります。他の相続人からすると、疎遠だった相続人には財産を渡したくないと思うかもしれません。しかし疎遠だった兄弟が相続分を主張し、トラブルになることもあります。
生前贈与があったと主張するケース
生前贈与がある場合、贈与額を「持ち戻して」相続分を計算します。詳細な計算は複雑なため割愛しますが、結果として受贈者が受け取れる遺産額が減り、その他の相続人が受け取れる遺産額が増えることがあるのです。このため、相続人のいずれかが、他の兄弟姉妹に生前贈与があったのではないかと主張すると、生前贈与の有無・額を巡ってトラブルになる可能性があります。
寄与分、特別寄与料の請求ができると主張するケース
寄与分とは、被相続人の財産の維持・増加に特別な貢献をした相続人がいる場合、その相続人が法定相続分に加えて受け取れる財産のことを指します。寄与分が認められると、受け取れる遺産額が増えるということです。
反対にいうと、その他の相続人が受け取れる遺産額は減ります。そのため寄与分の請求ができると主張する方がいると、他の兄弟姉妹との間で争いになるケースがあります。
同居していた側に対して預金の使い込みをしていたと主張するケース
兄弟姉妹のうち、親と同居していた方がいると、他の兄弟姉妹が「同居中に預金を使い込んだ」などと主張するケースもあります。もし本当に親の意思に反して使いこまれていた場合は、他の相続人は使い込んだ人に対して返還請求が可能です。
しかし、同居していた側とすれば、家族の生活費として引き出しただけだと主張するかもしれません。このように主張が食い違うと、訴訟に発展するほどのトラブルになる可能性もあります。
相続トラブルはさまざまなケースがある
ここまで紹介してきたとおり、相続トラブルには本当にさまざまなケースが存在します。それぞれの兄弟・姉妹の関係性はもちろん、相続財産の状態によっても事情が異なるため、それぞれのご家族にあった対策を取らなければなりません。
兄弟・姉妹間の相続トラブルを防止するポイント
兄弟・姉妹間の仲が悪い場合、相続トラブルが発生する可能性をゼロにすることは難しいかもしれませんが、防止するためのポイントはいくつかあります。
- 被相続人の生前に遺言書を作成しておく
- 相続財産調査はできる限り早めに行う
- 遺産分割協議が進まない場合は弁護士に相談する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
被相続人の生前に遺言書を作成しておく
相続に伴って兄弟姉妹に争いが発生する主な理由は、相続方法(相続割合)が決まっていないことに起因します。遺言書を作成しておけば、原則としてその遺言書に沿って遺産分割が行われるため、争いが起きるリスクを最小限に留められるでしょう。
相続財産調査はできる限り早めに行う
遺言書がない場合は、被相続人が亡くなったらできるだけ早く相続財産調査をすることをおすすめします。亡くなってから時間が経てば経つほど、使い込みなどの疑惑が発生しやすくなります。早期に遺産分割協議を始めるためにも、葬儀が落ち着き次第調査を開始しましょう。調査過程の記録を残しておくと、疑いを避けられます。
遺産分割協議が進まない場合は弁護士に相談する
もしどうしても兄弟姉妹間で遺産分割協議が進まない場合は、弁護士に相談してみてください。弁護士は他の士業と異なり、交渉を代理することも可能です。スムーズに合意に至るためにも、相続手続きに慣れた弁護士を頼りましょう。
兄弟・姉妹間の相続トラブルを弁護士に相談するメリット
兄弟・姉妹間で相続トラブルが発生しそうなとき、もしくは既にトラブルになってしまった場合、相談できる士業は「弁護士」のみです。弁護士に相談するメリットとしては、次のような点が挙げられます。
- 正当な遺産の範囲を知ることができる
- 一方的な主張を受け入れずに済む
- 調停や訴訟に発展せず済むケースが多い
- 遺産分割協議交渉を任せられる
- 遺留分侵害額請求の代理を任せられる
いずれか一つでも役立つと感じる方は、ぜひ弁護士に相談してみてください。それぞれ詳しく解説します。
正当な遺産の範囲を知ることができる
できる限り早く相続財産を調査すべきだとしても、そもそも遺産の全貌がつかめず、どうやって調べたらいいのかわからないこともあるでしょう。相続手続きに慣れた弁護士に依頼すれば、金融機関・行政などへ照会しながら、遺産額を正確に洗い出してくれます。
一方的な主張を受け入れずに済む
弁護士に相談すれば、他の兄弟の一方的な主張を受け入れずに済む可能性が高いです。法律的な観点から、どのように遺産分割協議を進めればいいのかアドバイスしてもらえます。
調停や訴訟に発展せず済むケースが多い
たとえ遺産分割協議がまとまるまで時間がかかったとしても、弁護士に相談すればお互いの交渉だけで合意できるケースも多いです。調停・訴訟にまで発展せず相続手続きを終えられる可能性もあるため、ぜひ弁護士を頼ってみてください。
遺産分割協議交渉を任せられる
弁護士は依頼人の代わりに、他の相続人と交渉することも可能です。これは他の資格には認められておらず、弁護士だけに許された行為です。兄弟姉妹間で感情的な対立が大きくなっている場合、直接顔を合わせて話すと、どうしても合意に至りづらいこともあるでしょう。交渉そのものを弁護士に任せてしまえば、心理的負担も軽減できます。
遺留分侵害額請求の代理を任せられる
遺留分とは、被相続人の遺産を最低限取得できる権利で、配偶者・直系卑属(子・孫)・直系尊属(父母など)に認められています。「不平等な内容の遺言」や「生前贈与」などにより遺留分を侵害された場合は、侵害した人に対して遺留分の取り戻しを請求できます。
侵害された遺留分を請求する場合は、まず侵害している人に対して直接請求します。つまり、当事者間の話し合いからスタートします。しかし、仲のよくない兄弟姉妹と遺留分侵害について話し合うのは、お互いにとって精神的負担が大きいでしょう。
弁護士は、遺留分侵害額請求を代理することも可能です。やはり調停・訴訟にまで発展させずに交渉をまとめるためにも、初期段階から弁護士に相談することをおすすめします。
まとめ
兄弟姉妹間で感情的な対立が大きくなっているとしても、遺言書がない場合には、相続人同士として全員で話し合って遺産分割の方法を決めなければなりません。遺言書がある場合も遺留分が侵害されている場合は、兄弟姉妹に対して侵害額を請求することもあります。
仲の悪い兄弟姉妹同士が直接交渉すると、より関係がもつれてしまい、調停・訴訟に発展してしまうケースも少なくありません。早期に協議を終え、スムーズに相続手続きを進めるためにも、不安なことがある方はぜひ弁護士に相談してみてください。弁護士法人あさかぜ法律事務所も各種相続相談に応じており、相続財産調査や遺産分割協議のサポートはもちろん、遺留分侵害額請求や遺産分割調停などにも一貫して対応しております。
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