亡くなる前の遺言作成と亡くなった後の遺産分割協議
人が亡くなるとき、その方が持っておられた財産は相続されます。
お亡くりになる前に、自分の財産を、誰に、何を、どれだけ相続させるかをあらかじめ決めておくことができます。それが遺言です。ゆいごん、法律用語としては”いごん”と読みます。
どれだけあげるかだけではなく、何をあげるか、例えば自宅不動産はこの人に、経営する会社の株式をあの人と言ったように財産ごとに相続させる相手を決めることができるのが遺言の長所です。
遺言を作っておけば、その方にもしものことがあったときにその遺言が執行され、遺言を作った方の想いに従った内容で次の世代へ承継することができます。
もしもの時の後のお話(亡くなった後)
ところが、遺言を作る方は多くはいらっしゃいません。遺言がない場合、民法に定める法定相続分に従って、法定相続人の間でその相続財産をどのように分け合うかを話し合うことになります。これが遺産分割協議です。
遺言を作っていない場合で相続人が数人いるときは、その全ての相続人で誰が何をもらうかいくらもらうかを決めていきます。協議に参加していない相続人が一人もいないようにしないといけません。(詳細解説)【初めての相続手続き】遺産分割協議の全て - 手続きから問題点まで徹底解説
身内での争いであることもあり、遺産分割の協議はあれが欲しいこれが欲しいと各相続人が主張することが多くなかなか短期間ではまとまりません。一方で、特に相続順位が第三順位である兄弟姉妹が相続人になる場合に多いのですが、兄弟姉妹の代襲相続人であるその兄弟姉妹の子が共同相続人になるような場合は、これまでに会ったこともない人達と協議をする必要があり、これはこれで話し合いがまとまりにくい傾向にあります。協議が時間をかけてもまとまらない場合は家庭裁判所で遺産分割協議遺産分割調停を行います。(詳細解説)府中市の遺産分割調停トラブル解決法 | 府中市の相続に強い弁護士
遺産分割調停では、財産目録や共同相続人の主張内容等をまとめて調停の申立書を作り家庭裁判所において調停員のもと遺産分割ついての内容を定めていくことになります。
なお,遺産分割調停の家庭裁判所の管轄は、申立てをされた側(相手方)の住所を管轄する家庭裁判所になります(又は当事者で合意された家裁)。申立てをする相続人の住所の家庭裁判所ではありません。
この裁判所内での話し合いである調停をもってしても決着がつかない場合は審判という形で強制的に遺産の分割を行うことになります。審判の管轄は,相続開始地です。お亡くなりになった方の最後の住所地の家庭裁判所になります。
これら裁判所での手続きはおよそ1か月に一回程度しか期日が開催されません。そのため進行は速くはありません。また、調停手続きに参加している相続人自身がご高齢で判断能力に問題が生じた場合、その方について成年後見の申立てと成年後見人の選任が先行して必要になる場合もあり、さらに進行が遅くなることもあります。
調停に臨む場合は、争点を明確にして、無駄な話し合いの時間を削り迅速な解決を目指して、しっかりとテーマを用意しておく必要があります。
もしもの時の前のお話(亡くなる前のお話)
あなたのお気持ちを次の世代に繋げていくために、遺言のご作成を検討されてみてはいかがでしょうか。
遺言を作成するには遺言能力を必要とします。遺言内容を理解し、遺言の結果を弁識しうるに足る意思能力、遺言の結果どのような効力が生じるのかわかる力ですので、認知症状が進んだ方は遺言を作る能力が乏しくなってしまいます。
「あなたに私の財産は全部あげるから」と口約束はあっても、遺言書を残していないとそれはただの口約束に過ぎず、その約束通りに財産を譲り受けることができる法的な効果は生じません。
「この人にこの財産を残したい。」又は「この財産をあなたにあげる」と言われたときは、その気持ちを内容通りに実現する遺言を作成する良い機会です。民法は、比較的気軽に作成することができる自筆証書遺言、確実な内容で紛失の恐れがない公正証書遺言、その他の方式など、ご自身の想いを残したい方のために様々な種類の遺言の方式を用意しています。なお、自筆証書遺言も、自筆証書遺言書保管制度の創設により、同制度を利用することで紛失の恐れがなくなり、より一層利用しやすくなりました(家裁での検認も不要なものもあります)。
一度ご相談にお越しになり、お気持ちをお聞かせください。