遺留分に関する争いのケース数例
遺留分の争いはどのようなときに現れるのか、実際に問題となってきたケースを見てみましょう。
✅遺言が見つかった。ただ、その遺言によって自分がもらえる財産が思っていたよりも少ないし、ほかの兄弟ともらえる額の差が大きいことにも納得がいかない。
✅相続財産の内容を調べてみたら、すでにかなりの額が生前にほかの兄弟に贈与されていた。
✅他の相続人から遺留分侵害額請求の文書を受け取った。遺言により受け取った不動産はすでに売却しており、どのように対応すればよいのか。
遺留分、遺留分侵害額請求とは
遺留分の制度は、相続人のために一定の相続財産を保障する制度のことをいいます。
遺留分侵害額請求とは
贈与や遺言により自分の財産をどのように処分するか、誰に渡すかは個人の自由な意思によります(私的自治)。しかし、遺された配偶者や子ども、両親の生活や権利を守る必要もあるため、お亡くなりになった方と深い関係にある遺された方に最低限の取り分を保証するために、遺産の一定割合の取得を特定の相続人に保証するのが遺留分という民法上の制度です(兄弟姉妹には遺留分はありません)。
遺言が配偶者に全く遺産を相続させない内容である場合、配偶者は遺留分を有する遺留分権利者ですので、この遺言は配偶者の遺留分を侵害していることになります。
遺留分を侵害するような遺言を作るのは遺言者の自由です。また、遺留分侵害額請求権を行使することは遺留分権利者の自由です。遺留分を侵害する遺言があれば当然に無効になるわけではありません。遺留分を確保したいというのであれば、一定期間内に他の相続人などに対して遺留分侵害額請求を行う必要があります。
遺留分侵害額請求ができる人
遺留分は、亡くなった方の配偶者、子ども、子どもがいない場合亡くなった方の両親に認められます。(祖母祖父などの直系尊属、子を代襲相続した孫、胎児にも遺留分が認められることがあります)
一方で、亡くなった方の兄弟姉妹、相続放棄した人や相続欠格者や相続廃除された人には認められません。これは、これらの方は亡くなった方の財産に対する期待を別段に保護するほどのものでないことが一般的だからです。
逆に言うと、兄弟の方には遺留分がないわけですから、兄弟が推定相続人である場合、お世話をしてきた兄弟がいてその方に遺言を作っておいてもらわないと、自分以外に財産を渡す遺言を作られてしまうと一切財産は譲り受けられないことになります。
遺留分侵害額請求の方法・期限について
裁判所での手続きを申し立てる前に、まずは後述の消滅時効を確実に停止させるためにも内容証明郵便によって相手方に遺留分侵害額請求を送付しておくこと(配達証明つき)が一般的です。
遺留分侵害額請求には消滅時効がありますので、注意が必要です。遺留分権利者が相続の開始および減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年以内に行使しなければ時効となり消滅してしまいます(民法第1048条)。
遺留分の割合
①父母、祖父、祖母(直系尊属)だけの場合 法定相続分の3分の1
②それ以外の場合 法定相続分の2分の1
遺言を作られてお亡くなりになられた方が、あなたにとって必ずしも好ましい遺言を作っておられるとは限りません。遺言の内容に疑問を持たれたとき、共同相続人から遺留分侵害額請求をうけたときなどどうぞ弁護士にご相談ください。