この記事では、遺言書作成のサポートについて詳しく解説します。相続トラブルを防ぐ遺言書の重要性から、複雑な家族関係における作成のポイント、相続に強い弁護士によるサポートの利点まで網羅的に学べます。自筆証書遺言と公正証書遺言の比較、遺言書の保管方法、遺言執行者の選び方など、実践的な知識も提供します。さらに、遺言書作成にかかる費用の目安や、信頼できるサポートサービスの選び方まで具体的にアドバイスいたします。
1. 遺言書の重要性と相続トラブルの予防
遺言書は、故人の財産をどのように分配するかを明確に示す重要な法的文書です。相続をめぐる家族間のトラブルを未然に防ぎ、故人の意思を確実に実現するために、遺言書の作成は非常に重要な役割を果たします。
相続人となりうる方が複数いらっしゃる場合又は相続人となりうる方がいらっしゃらない場合、遺言作成をご検討されてはいかがでしょうか。
当事務所の弁護士は、ご相談の場において、ご相談者のご意向や相続人の人数やお立場などをしっかりと伺い、最もふさわしい遺言の内容や方式をご提案させていただきます。遺言の方式に従った適法な遺言を作ることはもとより、譲り渡す方にも譲り受ける方々にも安心いただける遺言の作成をお手伝いいたします。
遺留分との関係についても法的にしっかりとサポートを行い、遺言執行の際に大きなトラブルを発生させないように、遺言を作る方、財産を残してもらう方それぞれのご関係やお気持ちに配慮した遺言作成をご提案させていただきます。
1.1 遺言書が果たす役割
財産分配の明確化
遺言書を作成することで、故人の意思に基づいて具体的な財産分配の方法を定めることができます。これにより、誰がどの財産を相続するのかが明確になり、相続人同士の誤解や不公平感を避けることが可能です。例えば、不動産や金融資産などの分け方があらかじめ決まっていれば、相続人間での話し合いが円滑に進むでしょう。
相続トラブルの予防
遺言書を用意することで、相続人間の争いを防ぐことができます。特に、遺産が複数の相続人に分配される場合、何も遺言がなければ「誰がどれだけ受け取るか」を巡って争いが生じる可能性があります。遺言によって配分が明確にされていると、争いを未然に防ぐことができ、相続手続きがスムーズに進むことが期待できます。
相続手続きの簡素化
遺言書があることで、相続人間での調整や合意形成にかかる時間や手間が大幅に省けます。遺言書がない場合、相続人全員が集まり、話し合いを通じて相続方法を決めなければなりませんが、遺言書があればその内容に基づいて手続きを進めることができます。これにより、相続手続きが迅速に完了し、相続人の負担が軽減されます。
特定の相続人への配慮
遺言書を作成することで、特定の相続人に対する配慮を行うことが可能です。例えば、故人の介護や世話をしていた相続人に対して、他の相続人よりも多くの財産を渡すことができます。また、特定の事業を引き継ぐ相続人や、経済的に困っている相続人に特別な配分を行うことも可能です。このような個別の事情に合わせた配慮を行うことで、より故人の意思を反映した相続を実現できます。
1.2 相続トラブルの実態と予防策
相続トラブルは、家族関係を悪化させ、長期にわたる争いに発展する可能性があります。
1.2.1 主な相続トラブルの原因
原因 | 内容 |
---|---|
遺産分割方法の不明確さ | 遺言書がない場合、相続人間で遺産の分け方について意見が対立しやすい |
相続人間の不公平感 | 生前贈与や相続人の貢献度の差により、不公平感が生じる |
複雑な家族関係 | 再婚や養子縁組などにより、法定相続人の範囲が複雑化する |
財産の把握不足 | 被相続人の財産状況が不明確で、相続人間で情報の行き違いが生じる |
1.2.2 相続トラブルの予防策
相続トラブルを予防するためには、以下のような対策が効果的です:
- 遺言書の作成:自身の意思を明確に示し、法的な効力を持たせる
- 生前贈与の活用:相続税の軽減と同時に、生前に財産分配の意思を示す
- 家族会議の開催:相続に関する家族間の意思疎通を図る
- 財産目録の作成:自身の財産状況を明確にし、相続人に開示する
- 専門家への相談:弁護士や税理士などに相談し、適切なアドバイスを受ける
特に遺言書の作成は、相続トラブルを予防する最も効果的な手段の一つです。
1.2.3 遺言書作成のタイミング
遺言書は、以下のようなライフイベントや状況の変化に応じて作成や見直しを検討することが重要です:
- 結婚や離婚
- 子供の誕生
- 財産状況の大きな変化
- 家族構成の変化(再婚、養子縁組など)
- 事業承継の必要性
- 健康状態の悪化
遺言書の作成は、決して高齢者だけのものではありません。早い段階から自身の意思を明確にし、定期的に見直すことで、より確実に相続トラブルを予防することができます。
相続トラブルの予防と遺言書の重要性を理解し、適切な対策を講じることで、家族の絆を守り、円滑な財産承継を実現することができます。次章では、遺言書作成の基本知識について詳しく解説します。
2. 遺言書作成の基本知識
遺言書は、自身の死後に財産をどのように分配するかを明確に示す重要な法的文書です。適切な遺言書を作成することで、相続トラブルを防ぎ、故人の意思を確実に反映させることができます。ここでは、遺言書作成に関する基本的な知識をご紹介します。
2.1 遺言書の種類と特徴
日本の民法では、主に2種類の遺言書が認められています。他の方法もありますが、実務上ほぼ以下の2種類の遺言を作成しますので、二つの方法についてそれぞれの特徴を見てみましょう。
遺言書の種類 | 特徴 | 作成方法 |
---|---|---|
自筆証書遺言(民法第968条) | 遺言者本人が全文を自筆で作成(財産目録部分を除く) | 日付、氏名、押印が必要 |
公正証書遺言(民法第969条) | 公証人の関与のもと作成 | 証人2名以上の立会いが必要 |
自筆証書遺言は、手軽に作成できる反面、法的要件を満たさないことによる無効リスクがあります。
一方、公正証書遺言は、専門家のサポートを受けられるため、法的な問題を回避しやすいという利点があります。
2.2 遺言書に記載すべき内容(法的要件)
遺言能力についてまず注意が必要です。遺言者は、遺言作成時に遺言能力を有していることが求められます。認知症などの症状がある場合、遺言能力の有無が問題となる可能性があるため、医師の診断書を添付するなどの慎重な対策を行い、後日のトラブルを避ける必要があります。
2.2.1 自筆証書遺言の場合
自筆証書遺言を作成する際には、厳格な法律上の要式に従い必要があります。法律上の要件に従わないものは法的な効力がありません。
必ず記載しなければならない内容
- 遺言者の氏名 遺言書には、遺言者本人の氏名を自筆で記載します。
- 遺言の年月日 遺言書の作成日を明確に記載します。日付は「吉日」といった曖昧な表現では無効です。
- 遺言の内容(財産の処分等) 遺言の具体的な内容、つまり、どの財産を誰に相続させるかを明確に記載します。
- 自筆による記載 上記1~3のすべてを遺言者本人が手書きで記載しなければなりません。パソコンやワープロの使用は無効です。
- 押印 遺言書には必ず遺言者の押印が必要です。署名のみでは無効となります。実印を使用することが推奨されますが、認印でも有効です。
注意点
- 自筆で記載する義務 全文を遺言者が自筆で記載しなければなりません。ただし、財産目録に限っては、パソコンで作成したものを添付することが可能です。この場合、各ページに遺言者の署名と押印が必要です。また、財産目録がパソコンで作成されたものであることと、それが遺言書の一部であることを遺言書本文で明記することが重要です。
- 訂正方法 訂正がある場合は、訂正箇所に署名と押印が必要です。また、訂正箇所を明確に示すために、どの部分をどのように訂正したかも記載します。
- 複数ページの場合の割印 遺言書が複数ページにわたる場合、各ページに割印を行い、偽造や改ざんを防ぐことが重要です。
法的効力を確実にするための推奨事項
- 相続人の氏名と続柄 相続人の氏名を戸籍通りに記載し、遺言者との続柄も明記しておくことが推奨されます。
- 相続させる財産の具体的な内容 不動産や預金口座など、財産の詳細な情報を明確に記載し、どの相続人に何を相続させるかをはっきりさせます。特に、不動産は登記簿通りに記載することが推奨されます。
- 遺言執行者の指定 必要に応じて、遺言執行者を指定することで、遺言内容が確実に実行されるようにします。
これらの事項をしっかりと守ることで、自筆証書遺言が法的に有効となり、相続トラブルを未然に防ぐことができます。
2019年1月13日からは、法務局における自筆証書遺言書保管制度が開始され、より安全に自筆証書遺言を管理できるようになりました。
2.2.2 公正証書遺言の場合
- 公証人の面前で遺言の趣旨を口述すること
- 公証人が口述を筆記し、遺言者に読み聞かせるか閲覧させること
- 遺言者と証人が各自署名し、押印すること
- 公証人が署名し、押印すること
公正証書遺言は、公証人役場に来所するか公証人に自宅等へ出張していただくことで作成することができます。
3. 再婚や養子縁組、家族関係ごとの遺言作成のポイント
現代社会では、家族関係が複雑化しており、遺言作成時に考慮すべき点が増えています。ここでは、特に注意が必要な状況とその対応策について詳しく解説します。
3.1 再婚家庭での遺言書の重要性
再婚家庭では、前婚の子どもや新しい配偶者との関係など、考慮すべき要素が多くなります。遺言書がない場合、法定相続人間でトラブルが発生するリスクが高まります。複雑な家族構成において、遺言書は財産分配の意思を明確に示し、将来の争いを防ぐ重要な役割を果たします。
- 前婚の子どもと現在の配偶者への配慮
- 公平性の確保:前婚の子どもと現在の配偶者の双方に対して、公平な分配を心がけることが重要です。
- 具体的な分配方法:例えば、現配偶者には住居を残しつつ、前婚の子どもには別の財産を指定するなど、遺言者の意図を具体的に示します。
- 生活基盤の保障:特に現在の配偶者の生活基盤を確保するための配慮が必要です。居住用不動産の使用権を配偶者に与えるなどの方法が考えられます。
- 感情的な配慮:単なる金銭的な平等だけでなく、それぞれの家族成員の感情にも配慮した分配を考えましょう。
- 養子縁組をしていない継子への配慮
- 法定相続人でない継子への対応:養子縁組をしていない継子は法定相続人ではないため、遺贈を通じて財産を残すことを検討します。
- 遺贈の必要性:養子縁組を行わない場合、遺産を渡す手段としては「遺贈」しか選択肢がないことを理解し、適切に対応することが重要です。
- 継子との関係性の反映:長年共に暮らしてきた継子に対しては、血縁関係のある子どもと同等の扱いを望む場合もあるでしょう。その意思を遺言書に明確に記載することが重要です。
- 将来の関係性への配慮:継子への遺贈が他の相続人との関係に与える影響も考慮に入れましょう。
- 特定の財産の分配指定
- 具体的な財産分配:住居に住み続ける現配偶者にその権利を与える一方で、前婚の子どもには金融資産を分けるなど、遺産を具体的に分配することでトラブルの発生を防ぎます。
- 思い出の品や家族の歴史を反映した財産:特別な意味を持つ財産については、誰に相続させるかを明確に指定することで、相続人間の争いを防ぐことができます。
- 事業用財産の承継:家業や個人事業の継続を考慮し、適切な相続人に事業用財産を承継させることを検討します。
- 不動産の分割方法:複数の不動産がある場合、それぞれの不動産をどの相続人に相続させるかを具体的に指定することで、将来の紛争を防ぐことができます。
- 前婚の配偶者との離婚条件への配慮
- 離婚協議の内容の反映:前婚の配偶者との離婚時の取り決めがある場合、それを遺言書に反映させることが重要です。
- 子どもの養育費への配慮:未成年の子どもがいる場合、その養育費の確保について遺言書で言及することも検討しましょう。
- 遺言執行者の指定
- 中立的な第三者の選任:再婚家庭では、利害関係が複雑になりやすいため、弁護士などの中立的な第三者を遺言執行者に指定することが望ましいでしょう。
- 遺言執行者の役割の明確化:遺言書の内容を確実に実行してもらうため、遺言執行者の権限と責任を明確に記載します。
- 定期的な見直し
- 家族関係の変化への対応:再婚家庭では、時間の経過とともに家族関係が変化する可能性が高いため、定期的に遺言書の内容を見直し、必要に応じて修正することも検討します。
このように、再婚家庭における遺言書の作成は、法定相続分だけでは解決できない様々な要素を考慮に入れ、細かく配分を明記することがポイントです。これにより、相続人間のトラブルを防ぎ、遺言者の意図を確実に反映することが可能になります。
3.2 養子縁組が絡む場合の遺言作成のポイント
養子縁組が関係する場合の遺言作成には、特有の考慮事項があります。以下に、注意すべきポイントをまとめました。
- 養子縁組の法的効果の理解
- 法的地位:養子縁組が成立すると、養子は法的に実子と同等の地位を得ます。遺言作成時には、養子も法定相続人として扱われることを認識する必要があります。
- 相続権の確認:養子は実子と同等の相続権を持ちます。この点を踏まえて遺産分割を検討する必要があります。再婚で養子縁組をしない場合、その子には相続権はありません。
- 普通養子縁組と特別養子縁組の違い
- 普通養子縁組:養子は実親と養親双方の相続権を持ちます。実方の親族との法的関係が残るため、実方の親族への遺贈を考慮する必要があるかもしれません。
- 特別養子縁組:実親との法的関係が切れるため、養親との関係のみとなります。
- 遺留分への配慮
- 養子の権利:養子にも遺留分権があるため、他の相続人への遺贈や他の養子との公平性を考慮しながら遺言を作成する必要があります。
- 公平な扱いの検討:実子と養子を区別せず、平等に扱うことが一般的です。
- 養子縁組の時期と遺言の関係
- 将来の養子縁組:遺言作成時にまだ養子縁組が成立していない場合、将来の養子縁組を見越した遺言内容にすることができます。
- 条件付き遺言:養子縁組が実際に行われなかった場合の対応も考慮しておくべきです。
- 遺言の明確性
- 具体的な記述:養子に関する記述は明確にし、誤解を招かないようにすることが重要です。例えば、「養子○○に」と具体的に記載するなど、対象者を特定することが望ましいです。
- 養親の意思の表現:養子を迎えた経緯や養子への思いを遺言書に記載することで、遺言の意図をより明確にすることができます。
- 養子縁組前の財産の取り扱い
- 縁組前取得財産の考慮:養子縁組前に取得した財産について、特別な配慮が必要な場合があります。これらの財産の扱いを遺言書で明確にすることが重要です。
- 養子の年齢による考慮
- 未成年養子の場合:未成年の養子がいる場合、その養育費や教育費の確保について遺言書で明確にすることが重要です。
- 成年養子の場合:成年の養子の場合、その自立状況や経済的状況を考慮した遺産分割を検討することも一案です。
- 公正証書遺言の利用
- 法的有効性の確保:養子縁組が絡む場合は特に、法的な有効性を確保するため、自筆証書遺言よりも公正証書遺言の利用を検討すべきです。
- 遺言執行者の選定
- 中立的な第三者の選任:養子が絡む場合、家族間の感情的な問題が生じる可能性があるため、弁護士などの中立的な第三者を遺言執行者に指定することが望ましいでしょう。
- 定期的な見直し
- 家族関係の変化への対応:養子縁組後の家族関係の変化に応じて、定期的に遺言書の内容を見直し、必要に応じて修正することが重要です。
これらのポイントを考慮することで、養子縁組が絡む場合でも、公平で明確な遺言を作成することができます。遺言者の意思を正確に反映し、将来の家族間のトラブルを防ぐためにも、慎重な検討と専門家のアドバイスが重要です。養子を含めた円滑な相続を実現するためには、これらの点に注意しながら遺言を作成することが不可欠です。
4. 遺言の専門家による遺言作成サポートの利点
遺言書の作成は、法的知識と経験が必要な複雑な手続きです。相続に精通した弁護士によるサポートを受けることで、多くの利点があります。
4.1 弁護士による遺言作成支援
相続に強く遺言に精通した弁護士の専門知識と経験により、法的に有効で争いの余地のない遺言書を作成することができます。
- 法的な正確性の確保:弁護士は、遺言書が法的要件を満たし、将来的な法的問題を回避できるよう支援します。
- 複雑な資産分割の適切な処理:不動産、株式、知的財産権など、様々な資産の分配を適切に計画します。
- 家族間の紛争予防:潜在的な争いを予測し、それを防ぐための条項を盛り込むことができます。
- 法的リスクの最小化:専門家の知識により、法的な問題や将来的な争いのリスクを大幅に減らすことができます。
- 時間と労力の節約:複雑な法的手続きや文書作成を専門家に任せることで、遺言者の負担を軽減できます。
- 最新の法律情報の反映:常に変化する相続法や税法に対応した最新の助言を得られます。
- 心の平和:専門家のサポートにより、遺言者は自身の意思が確実に実行されることに安心感を得られます。
4.2 公証人役場の活用方法
公証人役場は、公正証書遺言の作成において中心的な役割を果たします。公証人は、遺言者の意思を正確に反映し、法的に有効な遺言書を作成する責任を負います。
公正証書遺言の特徴は以下のとおりです。
メリット | 詳細 |
---|---|
法的な確実性 | 公正証書遺言は、最も法的効力の高い遺言形式です。 |
遺言の保管 | 原本が公証役場で保管されるため、紛失や改ざんのリスクがありません。 |
遺言能力の証明 | 公証人が遺言者の遺言能力を確認するため、後の争いを防ぎます。 |
専門家のアドバイス | 公証人が法的な観点から適切なアドバイスを提供します。 |
公正証書遺言の原本の取り扱いについて
1. 保管場所と期間
- 原本は作成した公証役場で保管されます。
- 保管期間は以下とおりです(公証人法施行規則27条)
- 遺言者の死亡後50年
- 証書作成後140年
- 遺言者の生後170年間
2. 原本の特徴
- 遺言者と証人の署名捺印があるのは原本のみです。
- 原本は公証役場から持ち出すことができません。
3. 安全性
- 公証役場で厳重に保管されるため、紛失や改ざんのリスクは極めて低いです。
- 平成26年(2014年)以降に作成された遺言公正証書は、電磁的記録も作成され二重に保存されています。
4. 閲覧
- 遺言者の死亡前は遺言者のみが閲覧可能です。
- 遺言者の死亡後は、以下の人が閲覧できます:
- 相続人
- 受遺者
- 遺言執行者
- 正当な利害関係人(証明が必要)
5. 相続手続き
- 原本は相続手続きで直接使用しません。
- 相続手続きには正本(原本と同一の効力を有する複製)や謄本(原本の内容全部を写した文書ですが、原本と同等の法的効力は持ちません)を使用します。
5. 自筆証書遺言と公正証書遺言の比較
遺言書には主に自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類があります。それぞれに特徴があり、状況に応じて適切な方法を選ぶことができます。
5.1 自筆証書遺言のメリットとデメリット
自筆証書遺言は、遺言者自身が全文を自筆で書く遺言書です。
5.1.1 メリット
- 費用が安い:基本的に紙と筆記用具だけで作成できるため、費用がほとんどかかりません。
- プライバシーが保たれる:他人に内容を知られることなく作成できます。
- 簡単に作成・変更できる:自分で書くため、いつでも作成・変更が可能です。
5.1.2 デメリット
- 形式不備のリスクが高い:法的要件を満たさないと無効になる可能性があります。
- 紛失・破棄のリスクがある:適切に保管されないと、見つからない可能性があります。
- 偽造・変造のリスクがある:第三者による改ざんの可能性があります。
◆法務局における遺言書の保管等に関する法律
法務局における遺言書の保管等に関する法律によると、自筆証書遺言を法務局(遺言書保管所)で保管するサービスが提供されています。遺言者本人が申請を行い、法務局職員が遺言書の形式的要件を確認した上で保管します。保管された遺言書は原本が50年間、画像データが150年間保存されます。相続開始後は、相続人等が内容を確認でき、家庭裁判所の検認も不要となります。このサービスにより、遺言書の紛失や改ざんのリスクが軽減され、相続をめぐる紛争防止に役立ちます。
5.2 公正証書遺言の特徴と作成手順
公正証書遺言は、公証人の関与のもと作成される公的な文書です。
5.2.1 特徴
- 法的な有効性が高い:公証人が関与するため、形式不備のリスクが低くなります。
- 保管が確実:公証役場で原本が保管されるため、紛失の心配がありません。
- 専門家のアドバイスが受けられる:公証人から法的アドバイスを受けられます。
5.2.2 作成手順
- 公証役場に予約を入れる
- 必要書類を準備する(本人確認書類、財産目録など)
- 遺言の内容を公証人と相談しながら決める
- 証人2名の立ち会いのもと、公証人が遺言書を作成(受遺者は証人になれません)
- 遺言者が内容を確認し、署名・押印する
- 公証人が署名・押印し、正式な公正証書遺言が完成
5.3 どちらを選ぶべきか判断のポイント
自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらを選ぶかは、以下のポイントを考慮して判断しましょう。
判断基準 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 |
---|---|---|
費用 | 安い | 公証人の費用は必須 |
法的安定性 | やや低い | 高い |
プライバシー | 保たれる | 他者の関与あり(証人2名) |
作成の手軽さ | 手軽 | 手続きが必要 |
専門家の助言 | 弁護士などへの事前の相談が推奨されます | 公証人との事前の打ち合わせが可能 |
財産が複雑で相続人間の関係が難しい場合は、法的安定性の高い公正証書遺言がおすすめです。一方、財産が単純で相続人間の関係が良好な場合は、自筆証書遺言でも十分かもしれません。
また、自筆証書遺言を作成しつつ、法務局の保管制度を利用するという選択肢もあります。これにより、自筆証書遺言のデメリットを一部解消しつつ、低コストで遺言を残すことができます。
最終的な判断は、個人の状況や希望に応じて行うべきです。必要に応じて弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。日本弁護士連合会の相続・遺言に関する情報では、専門家への相談方法についても詳しく説明されています。
6. 遺言書の保管と管理
遺言書の作成後、適切な保管と管理は非常に重要です。遺言書が紛失したり、改ざんされたりすると、せっかく作成した遺言の効力が失われる可能性があります。ここでは、遺言書の安全な保管方法と定期的な管理について詳しく解説します。
6.1 法務局における自筆証書遺言書保管制度
2020年7月から、法務局における自筆証書遺言書保管制度が開始されました。この制度を利用することで、自筆証書遺言を安全に保管できます(法務局における遺言書の保管等に関する法律)
6.1.1 制度の特徴
- 遺言書の原本を法務局で保管
- 遺言者本人による閲覧が可能
- 相続人等による遺言書情報証明書の請求が可能
- 遺言書の偽造・変造・紛失のリスクを軽減
6.1.2 保管の手続き
- 最寄りの法務局に予約
- 必要書類を準備(本人確認書類、遺言書等)
- 法務局で申請書を記入
- 手数料を支払い(3,900円)
- 遺言書を提出し、保管証を受け取る
6.2 公正証書遺言の保管方法
公正証書遺言は、作成した公証役場で保管されます。公正証書遺言の特徴と保管方法について説明します。
6.2.1 公正証書遺言の保管の特徴
- 公証役場で原本を保存
- 遺言者の死亡後、相続人等が閲覧可能
- 原本の紛失リスクがない
- 家庭裁判所の検認不要
7. 遺言執行者の役割と選び方、報酬など
遺言を作成する際、多くの人が見落としがちな重要な要素があります。それは、遺言執行者の選定です。遺言執行者は、遺言作成者の意思を確実に実行に移す重要な役割を担います。しかし、その役割の重要性や適切な人選について、十分な理解がないまま決めてしまうケースも少なくありません。
この記事では、遺言執行者の具体的な役割や責任、そして適切な人物を選ぶ際のポイントについて詳しく解説します。遺言執行者の選定は、あなたの遺産が確実に希望通りに分配されるかどうかを左右する重要な決断です。ここでの情報を参考に、慎重に検討することをおすすめします。
遺言執行者の主な役割と責任
遺言執行者は、故人の最後の意思を適切に実行する重要な役割を担います。その主な役割と責任は多岐にわたり、法的な知識と細心の注意が求められます。
1. 財産の管理と調査
遺言執行者の最初の任務は、遺産の適切な管理と調査です。これには以下の作業が含まれます:
- 相続財産の財産目録の作成と相続人への交付
- 遺産の適切な管理と保全
- 預金の払い戻しや分配、株式や自動車の名義変更、不動産の登記申請手続きなどの実施
- 相続人調査、相続財産調査の実施
遺産の価値を維持し、不正や損失を防ぐことが重要です。なお、財産の調査には法定相続人の立会いが必要な場合があります。
2. 遺言内容の実行
遺言執行者の中核的な責任は、遺言に記載された故人の意思を忠実に実行することです。具体的には:
- 遺言の内容の相続人への通知
- 遺言に記載された指示に従った財産の分配
- 遺贈の目的となった財産の引き渡しや登記などの手続きの実施
- 遺言執行に関する訴訟の当事者となること
- 子どもの認知、相続人の廃除とその取り消しなどの手続きの実施
3.遺言執行者の報酬基準
遺言執行者の報酬は、裁判所の判断や遺言書の内容に基づきます。報酬の額は、相続財産の規模や業務の複雑さによって異なることが一般的で、相続財産の1〜3%程度が目安とされます。
◆遺言に記載がない場合の報酬の決定方法
遺言に報酬が記載されていない場合、遺言執行者の報酬は、相続人と遺言執行者の協議により決められます。もし合意できない場合は、家庭裁判所が報酬額を判断することがあります。
民法(遺言執行者の報酬) 第1008条 1 家庭裁判所は、相続財産の状況その他の事情によって遺言執行者の報酬を定めることができる。ただし、遺言者がその遺言に報酬を定めたときは、この限りでない。 |
8. 遺言書作成にかかる費用の目安
遺言書の作成は、相続をスムーズに進める上で重要な手続きですが、その費用については多くの人が疑問を抱いています。ここでは、遺言書作成にかかる費用の目安について、種類別に詳しく解説します。
8.1 自筆証書遺言の場合の費用
自筆証書遺言は、遺言者本人が全文を自筆で作成する方法です。基本的な費用は以下の通りです:
- 印紙代:不要
- 法務局での保管を希望する場合は手数料:3,900円(保管申請時に1回だけ支払い、収入印紙で納付)
自筆証書遺言は最も安価な方法ですが、法的な知識が必要となるため、専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。
8.2 公正証書遺言作成の費用構造
公正証書遺言の作成費用は、公証人手数料令という政令で法定されています。
公正証書遺言の作成費用は基本的に数万円程度からですが、高額な財産を扱う場合や複雑な内容の場合は、数十万円になることもあります。正確な費用は、具体的な状況に応じて公証役場に確認することをお勧めします。
公正証書遺言作成にかかる費用は、主に以下の3つに分類されます:
- 公証人手数料
- 必要書類の取得費用
- その他の費用
1. 公証人手数料
公証人手数料は公証人手数料令で定められており、主に以下の要素で構成されます:
- 基本手数料: 遺言の目的である財産の価額に応じて決まります。 例:5,000万円超1億円以下の場合は43,000円
- 遺言加算: 財産総額が1億円以下の場合、11,000円が加算されます。
- 用紙代: 原本が4枚(横書きの場合3枚)を超える場合、1枚につき250円加算されます。
- 謄本・正本交付手数料: 1枚につき250円かかります。
2. 必要書類の取得費用
公正証書遺言作成に必要な書類の取得費用は以下の通りです:
- 戸籍謄本: 1通450円
- 印鑑証明書: 1通300円
- 住民票: 1通300円
- 不動産登記事項証明書: 1通600円
- 固定資産評価証明書: 1物件300円程度
これらの書類取得にかかる費用は、通常2,000〜3,000円程度になります。 ただし、地域や状況によって費用が多少異なる場合があります。
3. その他の費用
- 登記手数料: 遺言書保管制度を利用する場合、2,600円の登記手数料がかかります。
- 印紙代: 正本に貼付する収入印紙の費用(通常200円から1,000円程度)。
- 出張手数料: 公証人が出張する場合に発生(数千円から数万円)。
8.3 弁護士法人あさかぜ法律事務所に遺言作成サポートを依頼する費用
「弁護士費用、いくらかかるの?」その不安、解消します
弁護士に依頼することのデメリット、つまり弁護士に委任することにより発生する弁護士費用の額は、重要な懸念事項です。
弁護士に依頼することで発生する費用が依頼により受けうる経済的利益を上回らないか、また弁護士費用の具体的な金額は幾らかという点は最も気になる事柄です。
当事務所では、ご依頼者の利益を最大化するために、費用面でも透明性を持った対応を徹底し、弁護士費用の金額や種類、支払いが必要となる時期などについて明確にご説明しております。
費用倒れになるリスクがある場合は、そのデメリットを丁寧に説明しています。また、ご相談の場での即時にご返答いただく必要はありません。ご自宅で弁護士費用のコスト感と弁護士を依頼するメリット感を比べていただきながらご検討ください。
自筆証書遺言作成
着手金
22万円〜(消費税込み)
自筆証書遺言をご作成の場合で法務局での自筆証書遺言書保管制度をご利用されるときは法務局への手数料が別途発生します。
報酬 0円 自筆証書遺言、公正証書遺言ともに報酬はいただきません。
公正証書遺言作成
22万円〜(消費税込み)
公正証書遺言をご作成の場合は当事務所の費用のほか、公証人への報酬が別途発生します。
着手金が追加発生する場合
遺言内容が多岐にわたる場合、複雑な内容となる場合などについては着手金額について別途見積もりをさせていただく場合がございます。
報酬
0円 自筆証書遺言、公正証書遺言ともに報酬はいただきません。
日当
出張日当が発生する場合があります。
実費
郵送費、振込費用など実際に当事務所が立て替えたことにより発生した実費額をいただきます。
その他に事務手数料、振込手数料等の名目で費用を請求することはございません。
府中事務所無料相談、府中駅直結ル・シーニュ無料相談、電話LINE初回無料相談のご案内
まずは当事務所の無料相談にお越しいただき、遺言についてのご要望をお話しされてみませんか。費用の見積もりも無料で行っており、相談にお越しいただくことでかかる費用は一切ありません。
当事務所では、事務所にご来所いただいての相談やLINE無料相談、電話無料相談、ル・シーニュ無料相談会にて府中をはじめとする多摩地域の皆さまのお困りごとについて法律相談を承っております。
ご来所いただいてのご相談
事務所内のご相談は、相続、事故、債務のご相談を初回、時間の制限なく無料で行っております。
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