◆自己破産に関するQ&A
Q 自己破産すれば借金がなくなりますか?
自己破産をして、裁判所から免責決定を受ければ、借金の返済義務は消滅します。
ただし、税金、罰金、養育費などを滞納している場合には、非免責債権にあたりますので、自己破産をしたとしても、免責されることはありません。また、浪費やギャンブルが原因の借金については、免責不許可事由に該当しますので、免責決定を受けられない可能性もあります。
Q 自己破産をすると二度と借金はできなくなりますか?
自己破産をしたという情報は、信用情報機関に事故情報として登録されます。これは、いわゆる「ブラックリスト」と呼ばれるものです。ブラックリストに登録された状態だと、返済能力がないとみなされて新たな借金をすることはできません。
ただし、信用情報機関の事故情報は、7~10年で削除されるため、一定期間が経過すれば再び借金をすることができます。
Q 自己破産にはどの位の期間がかかりますか?
自己破産の手続きには、「同時廃止」と「管財事件」という2種類の手続きがあります。どのくらいの期間がかかるのかは、どちらの手続きになるかによって異なってきます。
同時廃止の場合は、申立てから2か月程度の期間で手続きが終了します。
管財事件の場合は、申立てから6か月~1年程度の期間で手続きが終了します。
管財事件では、破産者の財産の換価、債権者への配当、免責調査などが必要になりますので、同時廃止よりも手続き終了までの期間が長くなります。
Q 自己破産を考えていますが、20万円以下の財産であれば維持することはできますか?
自己破産をすると99万円以下の現金および家具などの生活必需品以外は、原則として処分されることになります。
ただし、20万円以下の財産であれば処分されることはありません。また、自動車、保険の解約返戻金、退職金などの各財産の評価額が20万円以下であれば、同時廃止で手続きを進められる可能性があります。
Q 管財事件とは何ですか?
管財事件とは、裁判所により破産管財人が選任される手続きです。破産管財人は、破産者の財産調査を行い、財産を換価処分することで債権者への配当を行います。また、浪費やギャンブルなど借り入れの経緯に問題がある場合には、破産管財人により免責調査が行われます。
破産者が20万円を超える財産を持っていたり、借入の経緯に問題があるケースでは、原則として、管財事件として処理されます。
Q 競売と任意売却はどこが違うのですか?
競売とは、不動産に担保を設定している債権者からの申立てにより、強制的に不動産を売却する手続きです。
任意売却とは、債権者の許可を得た上で、不動産を売却する方法です。
競売は、裁判所の関与のもと強制的に売却が進められますが、任意売却では、裁判所の関与なく、債務者の意思で売却を進めることができます。売却価額も、一般市場で売却ができる任意売却の方が競売よりも高く売却することができます。
Q 住宅を所有している場合、自己破産の手続は少額管財となってしまうのですか?
住宅を所有している場合に、少額管財になるかどうかは、住宅の評価額と住宅ローンの残高との関係で判断されます。
裁判所によって用いられる基準は異なりますが、東京地方裁判所では、住宅ローンの残高が住宅の評価額の1.5倍以上であれば、住宅の価値はないものとみなし、同時廃止により手続きを進めることができます。そのため、住宅があるからといって必ず少額管財になるというわけではありません。
Q 勤務先から退職金計算書を取り寄せると、自己破産をすることがバレてしまいそうなのですがどうすればいいですか?
勤務先に退職金計算書の作成を依頼する際に、利用目的や作成理由などを尋ねられることがあります。その際に、「自己破産のため」と言ってしまうと自己破産をすることがバレてしまいますので、「ローンの審査のため」など別の理由を伝えれば、自己破産がバレることはないでしょう。
また、どうしても勤務先に頼みづらいという場合には、退職金規程のコピーを取得し、自ら退職金見込み額を計算することも可能です。
Q 月のスマホ代が1万5千円くらいあるのですが突っ込まれて質問されますか?
月のスマホ代が高い場合には、裁判所から利用明細書の提出を求められたり、支払いの内訳を確認される可能性があります。これは、スマホ料金に端末の割賦払いが含まれていないかどうか、おサイフケータイとしての利用がないかどうかを確認するためです。
どの程度の金額であれば裁判所から突っ込まれて質問されるかは、一概にいえませんが、月のスマホ代が1万5000円程度であれば問題ないケースが多いでしょう。ただし、できれば1万円前後に抑えた方が無難です。
Q 家計簿はなぜ必要なのですか
家計簿は、裁判所に提出する「家計の収支状況」を作成するために必要になります。
自己破産の申し立てをするためには、債務者が支払不能の状態にあるといえなければなりません。支払不能であるかどうかは、債務者の収入と支出の状況を確認しなければ判断することができません。そこで、家計簿を作成して、債務者の家計の収支状況を明らかにするのです。
普段から家計簿をつけている人であれば、それを利用することができますが、そうでない人は、弁護士に相談後から家計簿をつけるようにしましょう。
Q 家計簿はどのように記載すればいいですか
家計簿は、収入と支出を分けて記載します。
収入には、給料、賞与、年金、生活保護、失業保険、養育費、児童手当、家族からの援助などの金額を記載します。支出には、家賃、駐車場代、食費、電気代、ガス代、水道代、電話代、新聞代、ガソリン代、医療費、教育費、交通費、被服費、日用品費、交際費、娯楽費、保険料などの金額を記載します。
裁判所にレシートや領収書の提出までは求められませんが、家計簿に記載する際には、レシートや領収書に基づいて正確に記載するようにしましょう。
Q ギャンブルが理由で管財人がついているので毎月の家計表で貯蓄ができていないと免責許可は難しいですか?
家計表で貯蓄ができていなかったとしても、免責許可決定を受けられる可能性はあります。
ギャンブルが原因となった借金については、免責不許可事由に該当しますので、原則として免責許可決定を受けることはできません。しかし、免責不許可事由があったとしても裁判所の裁量によって免責を受けられる可能性があります。これを「裁量免責」といいます。
ギャンブルが理由で管財人がついている場合には、管財人の調査に協力的である、借金をした当時と比べて家計の状況が改善されているなどの事情が認められれば、貯蓄ができていなくても免責を得られる可能性があります。
Q 同時に通帳の確認もされますか?
自己破産の申し立てをする際には、過去2年分の通帳の写しを提出しなければなりません。
裁判所に通帳の写しを提出すると、以下の内容がチェックされます。
・支払不能であるかどうか
・怪しいお金の動きがないかどうか
・保有する財産が自由財産の範囲内かどうか
通帳の記載から大きなお金の動きがあることが判明した場合には、使途などを確認されますので注意が必要です。
Q 同居している人の通帳や財産も確認されますか?
自己破産は、破産者個人の問題ですので、原則として、破産者以外の人の通帳や財産が確認されることはありません。
しかし、公共料金などの支払いを家族の通帳で行っている場合には、家族の口座から支払いがあることを証明するために、家族の通帳の提出が求められることがあります。また、家計が一緒になっているような場合には、同居家族の収入に関する資料(給与明細、源泉徴収票など)の提出が求められることもあります。
Q 借りていた会社や金額がわからない場合でも依頼できますか?
どこから・いくら借りていたかがわかない状態であっても、弁護士に債務整理を依頼することができます。
ただし、弁護士は、どこから借りていたかを調べることができませんので、債務者本人が借りていた会社を調べる必要があります。具体的には、信用情報機関から個人信用情報の開示を受けることで、過去の借入先を明らかにすることができます。信用情報機関には、加盟する団体や業者によって、CIC(株式会社シー・アイ・シー)、JICC(株式会社日本信用情報機構)、KSC(全国銀行協会)の3つがありますので、すべての信用情報機関に開示を求める必要があります。
Q 債務整理の手続きにはどれくらいの期間がかかりますか?
債務整理の方法には、任意整理、自己破産、個人再生の3種類があり、どの手続きで進めるかによって期間が異なってきます。
任意整理の場合には、3~6か月程度の期間がかかります。債権者の対応が早ければ短期間で手続きが終了することもあります。
自己破産の場合には、同時廃止であれば3~6か月程度、管財事件であれば6か月~1年程度の期間がかかります。
個人再生の場合には、6か月~1年程度の期間がかかります。
Q 破産をしたいのですが、お金を借りている友人には知られたくありません。
自己破産をする場合には、すべての債権者を債務整理の対象に含めなければなりません。そのため、友人からお金を借りている場合には、自己破産をすることが知られてしまうでしょう。
どうしても友人に知られたくないという場合には、自己破産ではなく任意整理の手続きを選択することで、友人に知られることなく債務整理を行うことができます。
Q 自己破産をするとマイホームを失いますか?
原則として、自己破産をすると自宅などの不動産は処分の対象となります。
住宅ローンが残っている状態であれば、債権者からの競売申し立てにより、強制的に自宅が売却され、住宅ローンの返済に充てられます。住宅ローンが残っていない場合には、破産管財人による任意売却により自宅が処分され、債権者への配当が行われます。
自己破産ではマイホームを維持することは難しいため、どうしても自宅を残したいという場合には、個人再生を検討するとよいでしょう。
Q 自己破産をすると車を失いますか?
自己破産により車が処分されるかどうかは、自己破産の申し立て時における自動車ローンの有無や車の評価額によって異なります。
自動車ローンが残っている場合には、一般的に所有権留保となっていますので、その状態で自己破産の手続きを行うと、ローン会社により車が引きあげられてしまいます。
また、車の評価額が20万円以上の場合には、原則として処分の対象となります。
そのため、自動車ローンがなく、車の評価額が20万円未満であれば、自己破産をしたとしても、車を維持することができます。
Q 自己破産すると生命保険を失いますか?
自己破産により生命保険を失うかどうかは、自己破産の申し立て時における保険の解約返戻金の金額によって異なります。
保険の解約返戻金が20万円未満であれば、生命保険を解約することなく維持することができますが、20万円以上の場合には、破産管財人により生命保険が解約され、債権者への配当が行われます。ただし、健康状態などから新たな保険に加入することができないといった事情がある場合には、自由財産の拡張手続きにより生命保険を維持できる可能性もあります。
Q 自己破産すると退職金を失いますか?
退職金も破産者の財産とみなされますので、退職金見込み額が一定金額以上である場合には、処分の対象となり、債権者への配当の原資となります。
退職金は、退職する際に会社から支払われるお金ですが、必ずしも破産手続きにあたり会社を退職しなければならないわけではありません。破産者の経済的再建のためには、仕事を続けて収入を得るということが重要ですので、退職金見込み額のうち一定金額を破産管財人に支払うことによって、退職金自体の処分を免れることができます。
Q 退職金の額の大きさにより何か影響はありますか
退職金は、自己破産による処分の対象財産に含まれますが、退職金の全額が対象となるわけではありません。
現時点で退職する予定がない場合には、退職金見込み額の8分の1が財産として扱われます。また、破産手続き中に退職する予定がある場合または既に退職しているものの退職金がまだ支払われていない場合には、退職金見込み額の4分の1が財産として扱われます。
上記の基準で計算をした処分対象財産が20万円未満の場合には、退職金は処分の対象にはなりません。
Q 自己破産すると持ち株会の株式を失いますか?
持ち株会の株式も破産者の財産となりますので、自己破産による処分の対象になります。
ただし、持ち株会の株式の評価額が20万円未満であれば、処分の対象外です。
一般的な株式とは異なり、持ち株会の株式は、毎月の給与から天引きで積み立てがなされていることが多いため、持ち株会の株式の存在に気付いていないこともあります。後から判明すると不利に扱われる可能性もありますので、給与明細などを確認して早い段階で把握しておくことが大切です。
Q 自己破産をすると財産を全て失うのですか?
自己破産をしたとしてもすべての財産を失うわけではありません。自己破産は、破産者の生活の立て直しを目的とした制度ですので、すべての財産を処分してしまうと借金がなくなったとしても生活をしていくことができません。
そのため、必要最低限の生活に必要な財産については保障されています。具体的には、99万円以下の現金や家具・家電などの生活に必要不可欠な物です。また、裁判所によって基準は異なりますが、一定金額未満の財産(預貯金、車、株式、退職金、保険の解約返戻金など)は、財産的価値のないものとみなして、処分の対象外となります。
Q 自動車ローンが残っていない場合
自動車ローンが残っていない場合には、自動車の評価額によっては、自己破産による処分の対象となります。
たとえば、東京地方裁判所では、自動車の評価額が20万円以上である場合には、原則として処分の対象とする運用がとられています。そのため、20万円以上の価値のある自動車を持っている場合は、自動車を処分して、債権者への配当を行わなければなりません。
ただし、自動車を維持する必要性がある場合には、自動車の評価額に相当する現金を支払うことで、自動車の処分を免れることができる可能性があります。
Q 自動車ローンが残っている場合
自動車ローンが残っている場合には、一般的に、自動車の所有権は、ディーラーや信販会社に留保されているケースが多いです。このような契約を「所有権留保」といいます。
自動車ローンが残っている状態で自己破産の手続きに着手すると、ディーラーや信販会社は、留保していた所有権に基づいて自動車を引きあげてしまいます。そのため、自動車ローンが残っている状態では、自動車を残したまま破産するのは難しいでしょう。
Q 自己破産すると携帯電話を失いますか
自己破産をしたとしても、原則として携帯電話を失うことはありません。
ただし、携帯電話の利用料金を滞納している場合や端末代金を分割で支払っている場合には、例外的に、携帯電話を失う可能性があります。このようなケースでは、滞納している利用料金や未払いの端末代金も自己破産の対象に含まれますので、これらの支払いもストップしなければなりません。そうすると携帯電話会社では、料金の未払いまたは端末代金の未払いを理由に携帯電話の通信契約を強制的に解約してしまいますので、それにより携帯電話の利用ができなくなってしまいます。
Q 自己破産をすると老齢年金を貰えなくなりますか。年金を借金の支払いに回されることになりますか?
老齢年金などの公的年金は、差し押さえ禁止財産とされていますので、自己破産をしたとしても老齢年金の受給資格には影響はありません。そのため、自己破産後も老齢年金をもらうことができます。
また、年金が借金の支払いに回されるということもありません。
ただし、個人年金などの私的年金については、自己破産による処分の対象財産になりますので、年金を解約して債権者への配当に回さなければなりません。
Q 自己破産すると、生命保険や子どもの学資保険は解約しなければなりませんか?また、解約せずに済む方法はありますか?
生命保険のうち掛け捨てではない積立型の保険については、自己破産による処分の対象財産に含まれます。また、子どもの学資保険のうち破産者が名義人になっているものについては、同様に自己破産による処分の対象財産に含まれます。そのため、解約返戻金の金額が20万円以上ある場合には、原則として保険の解約が必要となります。
ただし、保険を維持する必要性がある場合には、解約返戻金相当額を現金で支払うことにより、保険を維持できる可能性があります。
Q 自己破産後に得た収入や財産も処分されてしまいますか?
自己破産後に得た収入や財産のことを「新得財産」といいます。自己破産における処分の対象となる財産は、破産手続き開始決定時に存在する財産に限られますので、新得財産については、処分の対象外となります。
Q 自動車ローンが残っていたため自動車を処分し、自動車ローンの支払いに充てたところ、30万円が現金で手元に残りました。この30万円は処分されてしまいますか?
自動車の処分により30万円の現金が得られたとしても、自己破産の手続きで処分されることはありません。
一般的に33万円以上の現金を持っている場合には、管財事件となりますが、現金が99万円以下であれば、自由財産の拡張により、現金が処分されることはありません。
また、現金が33万円未満であり、その他の財産も20万円以上の価値のあるものがない場合には、同時廃止となり、現金が処分されることはありません。
このように、管財事件と同時廃止のどちらに振り分けられてとしても、現金30万円が処分されることはないでしょう。
Q 自己破産で自動車や住宅を処分する場合、滞納している自動車税や固定資産税は支払わなければいけませんか?
自動車税や固定資産税などの税金は、自己破産による免責の対象外とされています(非免責債権)。そのため、自己破産をしたとしても、税金などの支払いは別途行わなければなりません。
自己破産で自動車や住宅を処分する場合には、処分により得られたお金は、債権者への配当にまわされます。税金などの滞納がある場合には、一般的な債権者よりも優先的に弁済を受けられますので、まずは、滞納している税金の支払いに充てられることになります。
Q 住んでいるマンションを処分する場合、滞納しているマンション管理費は支払わなければなりませんか?
滞納しているマンション管理費は、自己破産の対象となる債権に含まれます。そのため、自己破産により免責許可決定を得られた場合には、滞納しているマンション管理費も免責され、支払い義務はなくなります。
なお、区分所有法では、破産者が滞納していたマンション管理費は、破産者からマンションを取得した新しい所有者に承継されることになりますので、マンション管理組合は、新しい所有者にマンション管理費を請求していくことになります。
Q 親が私名義の生命保険を契約しているのですが、自己破産をすると、この保険はどうなりますか?
生命保険の解約返戻金が20万円以上である場合には、自己破産による処分対象の財産に含まれますので、原則として生命保険を解約する必要があります。ただし、対象となるのは、あくまでも破産者本人の財産のみです。
破産者の財産であるかどうかは、財産の名義だけではなく、実態を踏まえて判断されます。破産者名義の保険であっても、親が保険料を支払っていた場合には、破産者ではなく親の財産と判断される可能性もあります。
Q 私が自己破産すると私の借金の保証人はどうなりますか?
自己破産をすることにより破産者本人の借金の支払い義務はなくなります。しかし、保証人の保証債務には自己破産の効果は及びませんので、保証人の支払い義務がなくなることはありません。
そのため、主債務者が自己破産をすると、債権者は、保証人に対して一括請求を行いますので、保証人は、主債務者に代わって借金の支払いを行わなければなりません。
Q 自己破産をすると家族に借金が請求されますか?
自己破産をしたとしても、原則として家族に借金の請求がいくことはありません。
そもそも、借金の返済義務があるのは、借金をした本人またはその保証人に限られます。家族が保証人になっていないのであれば、破産者の家族だからという理由で借金の返済を迫られたとしても、それに応じる法的義務はありません。
Q 自己破産すると戸籍や住民票に載りますか?選挙権を失いますか?
自己破産をしたとしても、戸籍や住民票に自己破産の事実が記載されることはありません。また、選挙権は、18歳以上の日本国民ならだれでも認められる権利です。自己破産をしたとしても日本国民であることに変わりありませんので、選挙権を失うということはありません。
なお、自己破産をしたという情報は、「官報」というものに掲載されますが、一般の方が見ることはほとんどありませんので、自己破産をしたということが誰かにバレてしまう心配はほとんどないでしょう。
Q 自己破産をする場合、両親が自分名義で積み立ててくれた貯金はどうなりますか?
預貯金が20万円未満であれば、同時廃止となりますので、預貯金は処分されません。また、20万円以上の預貯金があったとしても、他の財産と合わせて99万円以下であれば自由財産の拡張により処分されることはありません。
ただし、対象となるのは、あくまでも破産者本人の財産のみです。破産者の財産であるかどうかは、財産の名義だけではなく、実態を踏まえて判断されます。破産者名義の預貯金であっても、親が積み立てていた場合には、破産者ではなく親の財産と判断される可能性もあります。
Q 自己破産をする前に、これまで親身になって助けてくれた友人にお金を返してもよいですか
自己破産をする場合には、すべての債権者を平等に扱う必要があります。これを「債権者平等の原則」といいます。ほかにも債権者がいるにもかかわらず、友人の借金だけ優先的に支払ってしまうと、債権者平等の原則に反し、「偏波弁済」とみなされてしまう可能性があります。
自己破産前に偏波弁済をしてしまうと、最悪のケースでは免責不許可事由に該当し、免責が受けられないおそれもありますので注意が必要です。
Q 自己破産をする場合、滞納している家賃を支払っても構いませんか?
滞納している家賃も他の借金と同様に自己破産の対象となります。そのため、滞納している家賃だけを優先的に支払ってしまうと、偏波弁済にあたり、免責を得られないなどのペナルティを受ける可能性があります。そのため、家賃の滞納があったとしても、基本的には支払うことはやめたほうがよいでしょう。
ただし、家賃の滞納があると賃貸借契約が解除され、物件からの立ち退きを命じられる可能性があります。引き続きその物件に住み続けたいのであれば、家族などの第三者に家賃の支払いを肩代わりしてもらうことも検討する必要があります。
Q 自己破産をすると、現在住んでいる賃貸住宅から立ち退く必要がありますか?
自己破産をしたとしても、原則として、現在住んでいる賃貸住宅から立ち退く必要はありません。
ただし、家賃の滞納がある場合には、家賃の滞納を理由に賃貸借契約が解除され、賃貸住宅からの立ち退きを求められることもあります。そのため、自己破産の申し立て前には、偏波弁済にならないように家賃の滞納を解消しておく必要があります。
Q 自己破産をすると、新規の借入や、自動車・住宅などの購入がその後一切できなくなるのですか?
自己破産をした情報は、信用情報機関に事故情報として登録されます。これは、いわゆる「ブラックリスト」と呼ばれるものです。ブラックリストは、信用情報機関に加盟してる銀行、消費者金融、クレジットカード会社などが確認することができますので、ブラックリストに事故情報が登録されている状態だと、新規の借り入れや自動車・住宅などの購入の際にローンを組むことができなくなります。
ただし、ブラックリストに登録されるのは5~10年ですので、ブラックリストから抹消された後であれば、新規の借り入れなどを行うことが可能です。
Q 自己破産をしても、家族や友人からの借金は返済できますか?
自己破産をして免責許可決定を受けることができれば、原則としてすべての借金の返済義務はなくなります。これは、家族や友人からの借金についても同様です。
ただし、あくまでも法律上の返済義務がなくなるだけですので、破産者が自らの意思で借金の返済をすること自体は禁止されているわけではありません。そのため、自己破産をしても、家族や友人からの借金を返済することは可能です
Q 債務整理をしてもデビットカードは使えますか?
債務整理をしてもデビットカードを使うことはできます。
デビットカードとは、カードでの支払いと同時に銀行口座から引き落としがなされる仕組みのカードです。銀行口座の残高の範囲内で利用することができ、クレジットカードのような後払いではありませんので、債務整理による影響を受けることはありません。
なお、デビットカードを作成する際にはクレジットカードのような審査もありませんので、債務整理後に新たに作成することもできます。
Q 債務整理をしたら銀行口座は開設できなくなりますか?
債務整理をしたとしても、銀行口座の開設は可能です。
債務整理をした情報は、信用情報機関に事故情報として登録されます。これにより、本人の支払い能力が問題になる新規の借り入れやクレジットカードの申し込みはできなくなります。しかし、銀行口座の開設は、本人の支払い能力とは無関係ですので、債務整理後でも問題なく行うことができます。
Q 債務整理をすると配偶者や婚約者・結婚に影響はありますか?
債務整理をしたとしても原則として配偶者や婚約者に影響が及ぶことはありません。また、債務整理をしたことが戸籍や住民票に記載されることはありませんので、結婚に影響が及ぶこともありません。
ただし、債務整理をしたことが配偶者や婚約者に知られてしまうと、借金をした理由や借金総額によっては、結婚することまたは結婚生活を続けることが難しいという理由から婚約破棄や離婚を求められる可能性があります。
Q 自己破産手続をすると子どもの進学や就職に影響することはないでしょうか。
自己破産をしたとしても子どもの進学や就職に影響が生じることはありません。
子どもの進学先や就職先で、親が自己破産をしたかどうかが調べられることはほとんどありません。また、自己破産をしたという情報は、官報に掲載されますが、子どもの進学先や就職先が官報をチェックすることもないでしょう。
ただし、子どもが大学に進学する際に奨学金を借りることになった場合、親が自己破産をしていると保証人になることができないというデメリットがあります。
Q 自己破産手続をすると銀行口座は使えなくなりますか。
自己破産をすると借金をしている銀行の口座は凍結されてしまいますので、利用することができなくなります。
銀行から借金をしている場合には、債務者が自己破産の手続きに着手すると銀行は、口座内の預金と借金とを相殺することで債権の回収を図ります。その際に、銀行口座の凍結がなされますので、それ以降は基本的には預金を引き出すことができなくなります。
ただし、借金をしていない銀行の口座については、問題なく利用することができます。
Q 借金だけでなく税金も滞納しています。自己破産手続をすれば税金も支払わなくて済むようになりますか。
自己破産をしたとしても、滞納している税金が免責されることはありません。
破産法では、自己破産をしたとしても免責されない債権(非免責債権)を定めています。税金は、非免責債権にあたりますので、自己破産をしても支払い義務がなくなることはありません。
税金の滞納がある場合には、税務署や自治体などが差押えの手続きをしてくることもありますので、分割納付などの方法によりきちんと支払っていく必要があります。
Q 離婚した元夫が自己破産手続をしたようです。今は転職して仕事をしているようですが、養育費も支払ってもらえないのでしょうか。
元夫が自己破産をしたとしても、養育費はこれまでどおり支払ってもらうことができます。
養育費の支払い請求権は、破産法上、「非免責債権」とされています。そのため、養育費の支払い義務者が自己破産をしたとしても、養育費の支払い義務がなくなることはありません。将来発生する養育費はもちろんのこと、自己破産時点で滞納していた過去の養育費についても免責の対象外ですので、自己破産後も支払いを求めていくことが可能です。
Q 自己破産した場合、就けなくなる職業があるのでしょうか。
自己破産をすると一定期間就けなくなる職業が存在しています。
以下のような職業については、自己破産による制限がありますので注意が必要です。
・弁護士、司法書士、行政書士、税理士などの士業
・生命保険募集人
・警備員
・貸金業登録者
・旅行業務取扱主任者
ただし、職業制限は一生続くものではなく、自己破産の申し立てから復権までの期間に限られています。
Q 自己破産した場合に、家族や子どもに影響があるのでしょうか。
自己破産をしたとしても、家族や子どもに影響が生じることは原則としてありません。
自己破産により破産者の財産が処分されることがありますが、対象となる財産は、破産者本人の名義の財産に限られます。家族だからという理由で破産者本人以外の財産が処分されることはありませんのでご安心ください。
ただし、家族や子どもが連帯保証人になっている場合には、破産者本人が自己破産をすると債権者から連帯保証人に対して請求が行くことになりますので注意が必要です。
Q 自己破産すると、引越や旅行ができなくなるのでしょうか。
自己破産をすると引っ越しや旅行ができなくなる可能性があります。
破産法では、破産者は、裁判所の許可を得なければ居住地を離れることができないと定められています。そのため、居住地を離れることになる引っ越しや旅行については、裁判所の許可がなければ行うことができません。
ただし、このような制限が生じるのは、破産手続きが管財事件となり、かつ破産手続きが終了するまでの間に限られます。同時廃止になった場合には、引っ越しや旅行の制限が生じることはありません。
Q 破産した場合に一生借入ができないのでしょうか、教えてください。
自己破産をしても一生借り入れができなくなるわけではありません。
自己破産をするといわゆるブラックリストに登録されてしまいます。ブラックリストに登録されている間は、新たな借り入れをすることはできませんが、ブラックリストの登録が抹消されれば、それ以降は借り入れが可能な状態になります。
なお、一般的に5~10年でブラックリストの登録は抹消されます。
Q 破産をするには、裁判所に行かないといけないのでしょうか
自己破産の手続きが「同時廃止」になれば、破産手続開始決定と同時に破産手続きは廃止されますので、債権者集会は開催されません。そのため、債権者集会に出席するために裁判所に行く必要はありません。
他方、自己破産の手続きが「管財事件」になると債権者集会が開催されますので、裁判所に行く必要があります。弁護士に依頼していたとしても、破産者本人が債権者集会に出席しなければなりません。
Q 税金や社会保険料は破産したらどうなりますか?
自己破産をしたとしても税金や社会保険料の支払い義務が消滅することはありません。
破産法では、「非免責債権」という自己破産をしたとしても免責を受けることができない債権が定められています。税金(所得税、住民税、自動車税、固定資産税など)や社会保険料(国民健康保険料、国民年金など)は、非免責債権とされていますので、自己破産をしても免責は受けられません。
そのため、税金や社会保険料の滞納がある場合には、自己破産後に税務署や自治体と相談しながら支払いを行う必要があります。
Q 健康保険はどうなりますか?
自己破産をしても滞納している国民健康保険料が免除されることはありません。
健康保険料は、破産法上の非免責債権に該当しますので、自己破産をしても免責の対象とはなりません。やむをえない理由で健康保険料の支払いができない場合には、減額や免除などの措置が受けられる可能性もありますので、早めに市区町村役場の窓口で相談してみましょう。
Q 従業員の給与と退職金を支払いたいのですが、問題でしょうか?
従業員の給与や退職金の未払いがある場合には、他の債権者と同様に自己破産の対象となる債権に含まれます。そのため、従業員の給与や退職金だけを優先的に支払ってしまうと偏波弁済に該当する可能性があります。
偏波弁済をしてしまうと、破産手続き開始後に破産管財人が否認権を行使して、従業員に対して受け取った給与や退職金の返還を請求することがあります。
Q 免責とは何ですか
自己破産における免責とは、借金などの債務の支払い義務を免除することをいいます。
自己破産をすれば借金がなくなると考える方も多いですが、正確には、自己破産をして免責許可決定を受けることで初めて借金の支払い義務が消滅します。自己破産の申し立てをすれば必ず免責が受けられるわけではなく、非免責債権は免責の対象外になりますし、免責不許可事由がある場合には原則として免責を受けることができません。
Q どのような場合に免責が認められないことになりますか
破産法では、一定の事由に該当する場合には、原則として免責を受けることができないと定められています。このような事由を「免責不許可事由」といいます。免責不許可事由には、以下のものがあります。
・債務者を害する目的で、不当に債務者の財産を減少させる行為
・破産手続を遅らせる目的で行う、不当な債務負担行為
・特定の債権者のみに利益を与える目的で返済する行為
・浪費やギャンブルのための過大な借金
・詐術による信用取引
・帳簿を隠したり偽造する行為など
・嘘の債権者名簿を裁判所に提出する行為
・裁判所の調査に対して説明を拒んだり、虚偽の説明をする行為
・破産管財人などの管財業務を妨害する行為
・過去7年以内に免責許可決定が確定していたこと
・破産法上の説明義務などの義務に違反する行為
Q 免責不許可事由に当たるものがあれば破産手続きをすすめても一切免責は認められませんか?
破産法上の免責不許可事由に該当するものがある場合には、原則として免責許可決定を受けることはできません。しかし、そのような場合でも裁量免責という制度により免責を受けられる可能性があります。
裁量免責とは、免責不許可事由に該当する事情がある場合でも、破産手続開始決定に至った経緯やその他一切の事情を考慮して免責を受けられる制度です。裁量免責を受けるためには、破産管財人の調査に協力し、破産者自身に経済的更生に向けた意欲があることが必要になります。
Q 免責決定を受けた後に、借金をしていた親しい友人などに返済することに問題はありませんか?
免責許可決定を受けることで、借金の法的な支払い義務は消滅します。そのため、債権者から「借金の返済をしてくれ」と言われたとしても、免責されたことを理由にそれを拒むことができます。もっとも、法的な支払い義務はありませんが、債務者自身で任意に債権者に返済することは可能です。そのため、免責決定後に親しい友人や家族などに返済をしたとしても問題はありません。
Q ギャンブルの借金でも免責されますか?
ギャンブルが原因で作った借金は、免責不許可事由にあたりますので、原則として免責を受けることはできません。
しかし、現時点でギャンブルをやめていて、経済的更生に向けて真摯に努力しているような場合には、裁量免責という制度により免責が受けられる可能性があります。免責不許可事由がある場合には、管財事件になりますので、破産管財人の調査にしっかりと協力することも大切です。
Q 免責を受けることで連帯保証人や保証人も同じく免責を受けたことになりますか?
免責の効果は、自己破産をした破産者本人にしか及びません。そのため、連帯保証人や保証人は免責を受けたことにはなりません。
破産者本人が自己破産をして免責を受けた場合には、債権者は、連帯保証人や保証人に対して、一括返済を求めていきます。連帯保証人や保証人は、債権者と協議して、分割払いにしてもらうか、債務整理を検討する必要があります。
Q 以前自己破産を行い、免責を受けたことがあります。また自己破産して免責を受けることはできますか
自己破産には、回数制限はありませんので、過去に自己破産をしていたとしても再度自己破産をして免責を受けることは可能です。
ただし、前回の自己破産から7年を経過していない場合には、免責不許可事由に該当しますので、原則として再度自己破産をしても免責を受けることはできません。しかし、例外的に裁量免責により免責が認められるケースもありますので、7年以内に自己破産をする場合には、弁護士と相談しながら進めていくとよいでしょう。
Q 闇金からお金を借りてしまいました。利息がとんでもない金額なのですが、どうしたらいいでしょうか。
闇金から借りたお金は、元本および利息のどちらも返済する必要はありません。
闇金は、利息制限法や出資法に違反する金利を設定していますので、そのような金利の設定は違法無効となり、返済義務はありません。また、闇金は、反倫理的な行為ですので不法原因給付(民法708条)に該当し、貸し付けたお金の返還を求めることができません。そのため、利息だけでなく元本についても返済義務がないのです。
◆任意整理に関するQ&A
Q 任意整理とはどのような手続きですか?
任意整理とは、債権者との交渉により借金返済の負担を軽減する手続きです。
任意整理では、主に以下のような方法により借金返済の負担軽減を行います。
・将来利息のカット
・遅延損害金の減免
・支払回数の変更
・月々の返済額の減額
・支払猶予
・利息制限法に基づく引き直し計算
大幅な借金減額の効果まではありませんが、債務整理の対象に含める債権者を自由に選択できるのが特徴です。
Q 任意整理すると過払金の返還請求ができると聞いたのですが、本当ですか?
任意整理の手続きでは、すべての取引について利息制限法に基づく利息の引き直し計算を行います。その結果、払いすぎた利息が残った場合には、債権者に対して過払金返還請求を行うことができます。
以下のようなケースでは、過払金がある可能性がありますので、早めに弁護士に相談するようにしましょう。
・2007年以前から借金をしている
・完済してから10年を経過していない
・返済と借り入れを繰り返している
Q 任意整理によって借金をどのくらい減額できますか?
任意整理
任意整理では、将来利息のカットや遅延損害金の減免がメインになりますので、借金の元本を大幅に減額することはできません。しかし、返済期間を延ばすことにより、月々の返済額を減らすことは可能です。
現在の返済額では、毎月の返済が苦しいという場合には、任意整理を検討してみるとよいでしょう。
Q 任意整理をすると、どのくらいの期間で返済していくことになりますか?
任意整理の返済期間は、原則として3年が目安になりますが、最長で5年まで返済期間を延ばしてもらうことも可能です。ただし、任意整理は、債権者との合意に基づく手続きになりますので、債権者が3~5年の返済期間に合意してくれることが条件になります。
債権者が合意してくれれば5年を超える返済期間を設定することも可能ですが、返済期間中に病気、怪我、失業などにより収入が途絶えるリスクも考慮すれば、3~5年での返済を目指すのが現実的でしょう。
Q 任意整理をして、遅延損害金や利息を免除してもらうことはできますか?
任意整理をすれば、遅延損害金や利息を免除してもらうことが可能です。
借金を滞納していると、滞納した期間に応じた遅延損害金が発生します。また、契約どおりに返済をしていても利息が発生しますので、なかなか元本が減っていきません。しかし、任意整理をすることで、返済中に発生する利息を免除してもらうことができますので、債務者としては元本のみを返済すればよいことになります。また、遅延損害金も免除してもらえれば、借金返済の負担は大幅に軽減されるでしょう。
Q 任意整理をした場合は保証人に迷惑がかかりますか?
保証人付きの債権を任意整理の対象とした場合には、債権者から保証人に対して一括返済が求められますので、保証人に迷惑をかけてしまいます。
しかし、任意整理は、自己破産や個人再生とは異なり、債権者平等の原則が適用されませんので、任意整理の対象に含める債権を自由に選ぶことができます。保証人付きの債権がある場合には、それを任意整理から除外することで保証人への迷惑を回避することが可能です。
Q 借金の理由がギャンブルや浪費でも任意整理はできますか?
借金の理由がギャンブルや浪費でも任意整理は可能です。
自己破産の場合には、ギャンブルや浪費による借金は、破産法上の免責不許可事由に該当し、原則として免責を受けることはできません。しかし、任意整理の場合には、そのような制限はありませんので、ギャンブルや浪費が原因の借金であっても任意整理をすることができます。
Q 和解したとおりに返済できなくなった場合、どうすれば良いのでしょうか
任意整理により債権者と和解したものの、その後の事情の変化により、和解内容に従った返済ができなくなることがあります。そのような場合には、再度債務整理を行うことにより、返済負担を軽減できる可能性があります。
債務整理の方法としては、再度の任意整理のほかにも、自己破産や個人再生という方法もあります。ご自身の状況に応じて適切な手段を選択するようにしましょう。
Q 収入が多いときだけ多く払う「ある時払い」はできますか
「ある時払い」とは、一般的に、借金の返済期限を定めずに、お金の余裕があるときに返済する方法をいいます。このようなある時払いは、債権者にとってはいつ返済を受けられるかわからず、債権回収ができなくなるリスクがあることから、任意整理である時払いの条件で合意することは難しいでしょう。
Q 全ての債権者とではなく一部の債権者と任意整理することはできますか
任意整理は、自己破産や個人再生とは異なり、債権者平等の原則は適用されません。そのため、すべての債権者とではなく、一部の債権者と任意整理することができます。
たとえば、保証人に迷惑をかけたくないという場合には、保証人付きの借金を除外して任意整理を行うことで、そのような希望を実現することができます。
Q 任意整理にはどのくらいの期間を要しますか?
任意整理の手続きに要する期間は、3~6か月程度になります。
任意整理は、一般的に以下のような流れで進んでいきます。
・弁護士から債権者に受任通知の送付
・債権者から取引履歴の開示
・利息制限法に基づく引き直し計算
・和解案の作成
・債権者との交渉
・合意
債権者の対応が早く、スムーズに交渉が成立すれば、早期に任意整理の手続きが終了することもあります。
Q 家族に内緒で任意整理をすることはできますか?
任意整理は、家族に内緒で行うことも可能です。
任意整理を弁護士に依頼すると、債権者からの連絡や郵便物は、代理人である弁護士のところにきます。また、任意整理は、自己破産や個人再生のように家族の収入や資産関係の資料の提出が求められることはありません。
そのため、任意整理をしたことが家族に知られる心配はほとんどありません。
Q 任意整理は確実に和解に成功しますか?
任意整理は、債権者との合意による債務整理の方法ですので、債権者の合意がなければ和解を成立させることができません。そのため、債権者の合意が得られない場合には、任意整理が失敗することもあります。
たとえば、5年を超える返済期間を設定した場合や債権者に債務名義を取られているようなケースでは、債権者が任意整理に合意をしてくれず、任意整理が失敗する可能性が高いでしょう。
Q 保証人には何か影響がありますか?
保証人がいる借金を債務整理の対象に含めてしまうと、債権者から保証人に対して、一括返済が求められてしまいます。
債務整理には、任意整理、自己破産、個人再生の3つの方法がありますが、保証人に影響を与えたくない場合には、任意整理を選択する必要があります。任意整理では、自己破産や個人再生のような債権者平等の原則が適用されませんので、一部の債権者を除いて債務整理を行うことも可能です。
Q 任意整理での和解後、債権者への支払いはどのようにするのでしょうか?
任意整理で和解が成立した後は、和解内容に従い、債権者に対して、毎月振り込みで返済を行っていかなければなりません。
返済方法には、債務者自らが各債権者に振り込みを行う方法と弁護士が返済代行を行う方法の2つがあります。複数の債権者がいる場合には、毎月異なる口座に振り込みをしなければなりませんので、負担に感じる方もいるかもしれません。そのような場合には、弁護士による返済代行を利用してみるとよいでしょう。
Q 弁護士に依頼をした場合、消費者金融業者からの嫌がらせはありませんか
弁護士に依頼をしても、消費者金融業者から嫌がらせはありません。
弁護士に依頼をすると、弁護士から消費者金融業者などの債権者に対いて、受任通知を送付します。受任通知が債権者に届いた後は、債務者への直接の連絡や取り立てが禁止され、弁護士が債権者との交渉窓口になります。そのため、消費者金融業者から債務者に直接連絡がいくことはありませんので、嫌がらせがなされる恐れもありません。
Q いつから借りたのか記憶も曖昧ですし契約書などの資料もまったくありません。それでも弁護士に依頼することはできますか。
借り入れ時期が曖昧で、契約書などの資料がない場合でも、弁護士に依頼することができます。
弁護士に依頼をすれば、弁護士から債権者に対して取引履歴の開示請求を行いますので、正確な借り入れ時期や金額を明らかにすることができます。そのため、契約書などがなくても問題なく債務整理を進めていくことができます。
Q 引越をしてしばらく経った頃、10年以上前に消費者金融から借り入れをした借金の請求書が来ました。もう7年くらい返していないのですが、業者には電話をしたほうが良いでしょうか。
消費者金融からの借金は、最後の取引(借入、返済)から5年を経過すると、消滅時効により借金の返済義務が消滅します。しかし、時効完成後であっても、それを知らずに返済猶予を求めたり、借金の一部だけでも返済してしまうと債務承認により、消滅時効の援用ができなくなってしまいます。
7年くらい借金の返済をしていないということであれば、時効の可能性がありますので、業者に連絡をする前に、弁護士に相談したほうがよいでしょう。
Q 一人暮らしをしている息子が多重債務に陥っています。私が代理で債務整理をお願いすることはできますか。
債務整理の依頼については、債務者本人からの依頼がなければ対応することはできません。
本人が債務整理の手続きに前向きではないという場合でも、弁護士から債務整理のメリット・デメリットを丁寧に説明することで、債務整理を依頼したいという気持ちになることもあります。そのため、まずは、ご本人を連れて一度ご相談にお越しください。
Q 父が借金を残して亡くなりました。めぼしい遺産はありません。このまま放っておけばよいでしょうか。
借金も相続の対象になりますので、借金を相続したくないという場合には、相続放棄または限定承認の手続きが必要になります。
相続放棄または限定承認は、相続開始を知ったときから3か月以内に手続きを行わなければなりません。そのため、相続が開始した場合には、早めに手続きを進めていくようにしましょう。
Q 息子が多額の借金をしているようです。親である自分が代わりに払わなければならないのでしょうか
息子の借金であったとしても、原則として、親には返済義務はありません。そのため、親だからといって子どもの代わりに支払う必要はありません。
ただし、親が息子の借金の保証人になっている場合には、保証人としての責任がありますので、息子が借金の返済をしないときは、息子の代わりに返済をしなければなりません。
Q 未成年者が作った借金はどうなりますか?
未成年者が借金をするには、親権者である親の同意が必要になります。未成年者が親の同意なく借金をした場合には、親または未成年者がその契約を取り消すことができます。
ただし、未成年者がお金を借りる際に成人であると装っていたり、親の同意があると偽っていた場合には、相手の保護の必要性の方が高いため、契約の取り消しは認められません。
Q 友人から「責任を持って返済するから。」と言われ、自分名義でサラ金からお金を借りて、友人にお金を渡してしまいました。私には返済義務があるのでしょうか。
このような借金の名義貸しがあった場合、契約上はあなたが借金の名義人になっていますので、名義人であるあなたに借金の返済義務があります。
サラ金業者から返済を受けた際に、「友人に頼まれて借金をした」と言っても、返済を免れることはできませんので注意が必要です。
Q 勝手に連帯保証人にされてしまいました。どうすればいいでしょうか?
連帯保証契約は、債権者と連帯保証人との間の契約により成立します。そのため、勝手に連帯保証人にされてしまった場合、連帯保証人が連帯保証契約を引き受ける意思がありませんので、連帯保証契約は無効です。
そのため、自分の意思に基づく連帯保証契約ではないことを主張・立証して、連帯保証債務の履行を免れることができます。
Q どのくらいの期間、借金返済をしていないと、時効で支払う義務がなくなるのですか?
消費者金融、クレジットカード会社、銀行などからの借金は、最終返済日から5年を経過すると、消滅時効により借金の返済義務がなくなります。
ただし、5年の経過により自動的に借金が消滅するわけではありません。借金を消滅させるためには、時効期間経過後に、債務者による消滅時効の援用の意思表示が必要になります。
Q 任意整理後、途中で支払いが苦しくなった場合、再度任意整理はできますか?
当初の任意整理の内容に従った返済が難しくなった場合には、再度の任意整理(再和解)をすることもできます。
ただし、任意整理は、債権者の合意の必要な手続きになりますので、再和解に応じてくれない債権者がいる場合には、再度の任意整理を行うことはできません。その場合には、自己破産や個人再生を検討する必要があります。
Q 任意整理後に繰り上げ返済はできますか?
任意整理後に繰り上げ返済をすることは可能です。
ただし、任意整理では将来利息のカットが行われていますので、繰り上げ返済をしたからといって、返済総額が少なくなるというわけではありません。将来的に収入の減少や突発的な出費が生じた場合には、返済が難しくなることもありますので、繰り上げ返済をするかどうかは慎重に判断する必要があります。
Q 任意整理をすると、自動車を引揚げられますか?
自動者ローンの支払いが残っている場合には、任意整理をすると自動車が引き揚げられてしまう可能性があります。
一般的に自動者をローンで購入した場合、所有権留保により債権者が自動車の所有者になります。自動者ローンが支払えなくなると、所有者である債権者が車を引き揚げてローンの返済に充てられます。
Q 債権者から訴えられたのを放っておいたのですが?
債権者から訴えられた場合には、放置するのではなく適切に対応する必要があります。
債権者からの訴えを放置していると、債権者の請求どおりの判決が言い渡され、それに基づいて、財産の差し押さえがなされるリスクが生じます。すでに時効が成立している場合でも、適切に対応しなければ、債権者の主張が認められ、時効を理由に支払いを拒むことができなくなってしまいますので注意が必要です。
Q かえって支払いが厳しくなることはありませんか?
債務整理をすることで、現在の支払い状況よりも負担は軽減されます。
債務整理には、任意整理、自己破産、個人再生の3種類があり、それぞれ異なる特徴のある手続きになります。より効果的に返済負担の軽減を図るためには、最適な債務整理の方法を選択する必要がありますので、まずは弁護士にご相談ください。