『相続は、死亡によって開始する』(民法882条)。人が亡くなると「相続」が発生します。相続は多くの方が経験することになりますが、法律的な定めも多く、不安に感じる方も多いでしょう。とくに相続開始時に必要となる相続人調査や相続財産調査は重要なステップですが、相続手続きに慣れていない方には負担の大きい作業です。

相続案件の基本的な流れフローチャート


この記事では相続人調査の概要や手続きの流れ、弁護士に依頼するときの費用相場について解説します。相続手続きに備え、費用目安を知っておきたい方はぜひ参考にしてください。

相続人調査とは

相続人調査とは、亡くなった方(被相続人)の法定相続人を調べて漏れなく洗い出すことです。場合によっては、各相続人の意向、欲しい財産、法定相続分通りの取得を希望するのかそれ以上を希望するのかなども併せて調査することもあります。相続が開始した場合、まず行うべき手続きは次のとおりです。

  1. 公共料金・年金・保険などの手続き
  2. 遺言書の有無を確認
  3. 遺言書の検認(自筆証書遺言)
  4. 相続人調査・相続財産調査

ここから先の手続きについては、遺言書がある場合は遺言内容に従って遺言執行手続きを進めます。もし遺言書がない、または遺言書で分割方法が指定されていない財産などが見つかった場合は、相続人同士が遺産分割協議を行い、相続方法を決定します。
遺産分割協議は、法定相続人が全員そろって話し合わなければなりません。もし法定相続人が一人でも欠けていると、その遺産分割協議は無効です。そのため、相続が開始した場合、相続人調査によってできるだけ速やかに相続人を確定させなければなりません。

相続人調査が必要な理由

相続人調査が必要な理由については、先述した遺産分割協議の実施も含めて、次のような要素が挙げられます。

  • 遺産分割協議は相続人全員が関与しなければならない
  • 想定していない相続人が存在する可能性もある
  • 相続手続きで必要な戸籍謄本を集める

これらの観点から、相続人調査は必要となります。それぞれ詳しく解説します。

遺産分割協議は相続人全員が関与しなければならない

繰り返しとなりますが、遺産分割協議は法定相続人が全員合意しなければ無効です。たとえ一人だけ欠けていた場合でも、全員が揃っていない場合は、遺産分割協議および相続手続きをやり直さなければなりません。なお、法定相続人は次のように定められています。

  • 配偶者(常に法定相続人)
  • 子・孫など直系卑属(第1順位)
  • 父母・祖父母など直系尊属(第2順位)
  • 兄弟姉妹および代襲相続人など(第3順位)
法定相続人とその相続順位一覧

想定していない相続人が存在する可能性もある

「法定相続人は自分たちの家族だけなのだから、わざわざ調査しなくても全員把握している」と思う方もいるかもしれません。しかし、想定していない相続人が存在する可能性もあります。

たとえば被相続人に離婚歴があり、前婚での子どもがいる場合、その子も法定相続人です。かりに数十年前の結婚で生まれた子どもだとしても、法定相続人である限りは遺産分割協議に参加してもらわなければなりません。また、被相続人に隠し子がいる可能性もゼロではありません。
被相続人が結婚しているものの、子も親もいない場合は、配偶者と被相続人の兄弟姉妹(甥・姪)が法定相続人となります。もし被相続人の両親に離婚歴があり、父母一方のみを同じくする「半血兄弟」が存在すると、会ったこともない法定相続人が存在する可能性もあるのです。
このように、家族構成によっては想定以上に法定相続人の範囲が広がるケースも少なくありません。そのため、相続手続きをスムーズに進めるためには、相続人調査によって法定相続人の範囲を把握する必要があるのです。

相続手続きで必要な戸籍謄本を集める

不動産や銀行口座の相続手続きにおいては、相続関係が分かる戸籍謄本一式の提出が求められます。つまり、相続人全員を把握している場合でも被相続人の戸籍謄本が必要となるため、相続手続きを速やかに進めるためにも相続人調査は早めに着手したほうがよいです。

相続調査の流れ

相続人調査は専門家に依頼せず、自分で行うことも可能です。おおまかな流れを紹介します。

  • 法定相続人の範囲・順位を把握する
  • 必要書類を収集する
  • 被相続人の戸籍情報を調べる
  • 相続関係説明図を作成する

書類を集めることはだれでも可能ですが、戸籍情報を読み解いたり、相続関係説明図を作成したりする作業は、法律に慣れていない方には難しいかもしれません。ここで紹介する作業内容に不安を感じる方は、ぜひ弁護士に相談してみてください。

法定相続人の範囲・順位を把握する

最初に、法定相続人の範囲と順位を確認しましょう。配偶者は常に法定相続人です。しかし、これは法律上の婚姻関係を結んでいる場合に限ります。事実婚(内縁関係)の場合は、法定相続人とはなりません。
配偶者以外の相続人順位は先述したとおり、「子・孫など直系卑属(第1順位)」、「父母・祖父母など直系尊属(第2順位)」、「兄弟姉妹および代襲相続人など(第3順位)」の順番です。被相続人とご家族の状況をふまえ、どの親族が法定相続人となるのか把握しましょう。たとえば、「配偶者はいる、子どもはいない、両親と兄弟は死亡しているが甥が一人いる」というケースでは、配偶者と甥が法定相続人となります。

必要書類を収集する

つづいて、被相続人の出生時から死亡に至るまで、全期間を網羅した戸籍謄本を集めます。被相続人の戸籍謄本を漏れなく収集するには、死亡したときの本籍地で戸籍を取得し、そこから「一つ前の本籍地」を確認し、出生時に遡って戸籍を取得し続けます。なお、戸籍謄本を取得できるのは、戸籍に記載されている直系親族のみです。弁護士ら専門職は職権で取り寄せることができます。

被相続人の戸籍情報を調べる

戸籍謄本には、被相続人も含め、その戸籍に入っている者の名前・生年月日・関係などが記載されています。この情報を読み解き、被相続人の相続人情報を確認しましょう。とくに注意すべき記述は次のとおりです。

  • 婚姻・離婚
  • 養子縁組・認知
  • 転籍

たとえば先述した例で考えると、当初は「配偶者あり、子どもなし、両親と兄弟は死亡、甥が一人いる」と思っていたケースでも、戸籍謄本を取り寄せると、数十年前に離婚した配偶者との間に子どもがいると分かるかもしれません。子どもがいることが分かった場合は、配偶者と子どもが法定相続人となります。

相続関係説明図を作成する

戸籍情報を読み解いたら、被相続人と相続人の関係性をまとめた「相続関係説明図(相続人関係図)」を作成します。必ず作らなければならない書類ではありませんが、相続関係を一目瞭然で理解できるため、相続関係説明図があったほうが相続手続きをスムーズに進められます。

相続財産の調査

各財産については以下の方法で調査することができます。全ての財産を一括して調査することはできませんので、一つ一つ調査を進めていくことになります。

借金 も消極財産として相続財産となります。相続放棄を判断するためにも、債務額、借入時期などは重要な情報になります。

生命保険による死亡保険金 は受取人固有の財産であり相続財産ではありませんが、額や相続財産に対する比率によっては特別受益(民法903条)となりうるため調査をする必要があります。

最高裁決定平成16年10月29日 死亡保険金は、原則として民法903条1項の「遺贈又は贈与に係る財産」に当たらないが、「民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情」があるような場合に、例外的に同条の類推適用により、死亡保険金は特別受益になりうると判示
最高裁決定平成16年10月29日

預貯金

金融機関に口座の有無を確認します。

金融機関所定の書式に実印委任状と印鑑証明を添付して照会します。弁護士に依頼する場合は、依頼人から弁護士への委任状に実印と印鑑証明、弁護士から金融機関所定の書式に弁護士の実印と印鑑証明を添付して照会します。

不動産

・固定資産税の納税通知書(毎年4月から5月に届くことが一般的です)

・名寄帳 不動産所在地の自治体に請求します。同一自治体内の不動産が記載されています(法人名義の不動産は記載されません)。

証券

証券保管振替機構(ほふり)への照会

登録済加入者情報の開示請求にて、振替株式等に係る口座が開設されている証券会社、信託銀行等(口座管理機関)を確認することができます。

確認できる情報振替株式等の口座が開示時点において開設されている証券会社、信託銀行等の一覧
開示結果の見本担保の受入れ及び差入れに関する情報
確認できない情報振替株式等の銘柄名、取引履歴、保有残高 非上場株式のうち機構取扱対象でないもの、外国株式、国債、社債等の口座が開設されている証券会社、信託銀行等の一覧
証券保管振替機構 登録済加入者情報の開示請求ページより抜粋

開示請求結果である「登録済加入者情報通知書」を確認して、各証券会社に株式等の保有状況の確認を行います。

◆23条照会

弁護士による「23条照会」とは、弁護士法第23条の2に基づく制度で、弁護士が受任している事件に関して、証拠収集や調査を行うために必要な情報を官公庁や企業などから取得することを目的としています。この制度は、弁護士が所属する弁護士会を通じて行われます。

証券会社に株式等の保有状況などを問い合わせる場合に利用することができます。

生命保険

一般社団法人生命保険協会 生命保険契約照会制度(平時利用)

被相続人が保険契約者又は被保険者となっている生命保険契約の有無を、協会会員会社である生命保険会社に確認する制度です。

調査対象となる契約は、照会受付日現在有効に継続している個人保険契約で、死亡保険金支払済、解約済、失効等であるものは含まれません。照会事由が死亡の場合は死亡日まで最低3年間は遡って調査します。

生命保険契約の存在が確認された場合、各生命保険会社のコールセンターに契約内容の照会や請求を行うことになります。

◆23条照会

生命保険契約の存在が確認された場合又は存在することが推定される場合に、保険の種類、金額、保険料、保険契約者、志望保険金受取人などを調査するために用いることができます。

個別保険会社への23条照会への回答例

債務

信用情報機関へ照会し債務内容を調査します。銀行、信用金庫、農協等への負債は全国銀行個人信用情報センター(全銀協)、カード会社の場合はシー・アイ・シー(CIC)、消費者金融については日本信用情報機構(JICC)にそれぞれ照会をかけ調査を行います。相続放棄手続きを行う際にも重要な情報になります。

借入先調査先
銀行、信用金庫、農協等全国銀行個人信用情報センター(全銀協)
カード会社シー・アイ・シー(CIC)
消費者金融日本信用情報機構(JICC)

相続人調査を弁護士へ依頼するメリット

最後に、相続調査を弁護士へ依頼するメリットについて紹介します。これらの点に魅力を感じる方は、まずは弁護士にご相談されてみましょう。

  • 相続人、相続財産を明確に把握できる
  • 弁護士に全て依頼できるので依頼人は調査の手間がかからない
  • 相続手続き・相続トラブルまで相談でき、相続人同士の争いに唯一対応できる相続の専門家

それぞれ詳しく解説します。

相続人、相続財産を明確に把握できる

戸籍の収集は親族自ら対応できるかもしれませんが、法律的な知識がないと「転籍」、「認知」などの情報を見逃し、正しい法定相続人を導けない可能性もあります。また、戸籍謄本は現在デジタル化されていますが、平成6年以前の戸籍謄本は手書きで記述されているため、読み取りづらいケースも珍しくありません。
相続調査に慣れている専門家に依頼すれば、相続人や相続財産を間違いなく把握できるため、遺産分割協議のやり直しなど後々のトラブルを防げる点は大きなメリットです。

調査の手間がかからない

専門家に依頼すれば、相続人調査に関わる手間がかからないこともメリットの一つです。日本では結婚、離婚、転籍などに伴って新しい戸籍が作られ、さらに時代によっては戸籍様式の変更もあります。そのため、被相続人の死亡〜出生までの戸籍を遡る相続人調査では、想像以上に膨大な数の戸籍謄本を収集するケースも珍しくありません。
仮に兄弟姉妹が相続人になるケースでは、被相続人だけではなく、被相続人の両親の戸籍も死亡〜出生まで遡る必要があり、さらに多くの戸籍収集・調査が必要となります。そして、本籍地を移動している場合は本籍地ごとの役所で手続きしなければならないため、さらに手間がかかります。
相続人の一人が普段の生活を続けながら、このような相続人調査作業にも対応することは大きな負担となるでしょう。相続人としての負担を減らすためにも、相続人調査は専門家に依頼することをおすすめします。

相続手続き・相続トラブルまで相談できる

相続人調査は、あくまでも相続手続きのスタートに過ぎません。法定相続人が定まったら、遺産分割協議を行い、そこから相続手続きを進める必要があります。相続人同士でスムーズに話がまとまればいいですが、財産の分け方を巡ってトラブルになるケースも少なくありません。相続調査と合わせて相続手続き・相続トラブルまで相談することができ、相続人間の争いに対応できる専門家は弁護士だけです。迷ったときは地元の相続に強い弁護士に相談してください。

相続人・相続財産調査の費用目安

相続人調査や相続財産調査を弁護士に依頼する場合、その費用目安は5万円〜15万円程度が一般的です。この費用には、遺産分割協議書作成などの業務に対する費用は含まれていません。あくまで、相続人の存在や意向調査と相続財産の調査に対する費用とお考えください。

実務的には、相続人・相続財産調査と合わせてこれに続く遺産分割協議書作成、預貯金解約、不動産登記名義移転などの相続手続きまで依頼するケースも少なくありません。この場合は、続けて行う手続きによって費用はまちまちですが、明確に費用設定をしている事務所への依頼を検討した方が後のトラブルを防止することができます。

また、弁護士への報酬以外に、戸籍謄本の発行手数料、郵送費用などの実費がかかります。

当事務所の弁護士費用のご案内

相談料 初回無料(時間制限なし)

当事務所では、相続・事故・借金・離婚に関するお悩みについて初回無料法律相談をお受けしております。

時間制限もありません。ゆっくりとお話しください。しっかりとお悩みやご要望をお伺いします。弁護士法人あさかぜ法律事務所代表弁護士吉岡誠 府中大國魂神社前事務所末永太郎
時間制限もありませんゆっくりとお話しくださいしっかりとお悩みやご要望をお伺いします

相談料とは、面談による相談の対価としていただくお金です。

相続に関するご相談は、初回無料でお受けしております。

時間制限もありません。お悩みや聞きたいことを時間を気にせずお話しください。私たち弁護士がしっかりとご相談者さまのお悩みやご要望をお伺いし、適切な法的アドバイスを差し上げております。

相続財産調査 ・相続人調査 弁護士費用

着手金
11万円(消費税込み)

着手金が追加発生する場合

❶相続人の数による費用6人以上となる場合、1人ごとに5,500円(消費税込み、後払い)追加費用をいただきます

❷調査対象金融機関数による費用6社目以降、一社ごとに11,000円(消費税込み、後払い)追加費用をいただきます

❸自筆証書遺言検認手続き(立ち会い込み)の費用11万円(消費税込み、後払い)追加費用をいただきます

報酬   
0円  

実費   
郵送費、振込費用など実際に当事務所が立て替えたことにより発生した実費額をいただきます。
その他に事務手数料、振込手数料等の名目で費用を請求することはございません。

相続調査ののち、相続手続き完全サポートプランへ移行される場合、相続調査の弁護士費用を相続手続き完全サポートプランから差し引きます。

相続手続き完全サポートプランのご案内

全て弁護士が代行、登記や税務は司法書士・税理士に明確な費用で連携

当事務所では、全ての相続人の間で相続財産についてのご意向がある程度明らかになっている場合にご利用しやすい弁護士費用での相続手続き完全サポートプランをご用意しております。預貯金解約、不動産名義移転、相続税申告について、ご相続人に代わって全て当事務所の弁護士が手続きを代行し、登記や税務については相続関係に強く費用も明確に設定していただける地元の専門家をご紹介しております。

完全後払い!

当事務所の相続手続き完全サポートプランの弁護士報酬は、すべて後払いです。
また、料金も高くなりがちな弁護士費用を抑え、他士業と同じ費用水準でご提供。しかも弁護士が全ての業務を行いますので、他士業と異なりご依頼者の代理人として弁護士がすべて表に立ち手続きを進めることができます。ぜひご利用をご検討ください。

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