相続は、死亡によって開始する(民法882条)。人が亡くなると「相続」が発生します。相続は多くの方が経験することになりますが、法律的な定めも多く、不安に感じる方も多いでしょう。とくに相続開始時に必要となる「相続人調査」は重要なステップですが、相続手続きに慣れていない方には負担の大きい作業です。


この記事では相続人調査の概要や手続きの流れ、弁護士に依頼するときの費用相場について解説します。相続手続きに備え、費用目安を知っておきたい方はぜひ参考にしてください。

相続人調査とは

相続人調査とは、亡くなった方(被相続人)の法定相続人を調べて漏れなく洗い出すことです。相続手続きをスムーズに進めるには、法定相続人を一人も欠かすことなく調べる必要があります。前提知識として、相続手続きの流れについて見てみましょう。相続が開始、つまり身内の方が亡くなった場合、まず行うべき手続きは次のとおりです。

  1. 公共料金・年金・保険などの手続き
  2. 遺言書の有無を確認
  3. 遺言書の検認(公正証書遺言以外が見つかった場合)
  4. 相続人調査・相続財産調査

ここから先の手続きについては、遺言書がある場合は遺言内容に従って遺言執行手続きを進めます。もし遺言書がない、または遺言書で分割方法が指定されていない財産などが見つかった場合は、相続人同士が遺産分割協議を行い、相続方法を決定します。
遺産分割協議は、法定相続人が全員そろって話し合わなければなりません。もし法定相続人が一人でも欠けていると、その遺産分割協議は無効となるのです。そのため、相続が開始した場合、相続人調査によってできるだけ速やかに相続人を確定させなければなりません。

相続人調査の費用目安

相続人調査のみを弁護士に依頼する場合、その費用目安は3万円〜10万円程度です。

当事務所では、相続人調査及び財産調査着手金として5.5万円(消費税込み)をいただきます。

また、実務的には、相続人調査と合わせて相続手続きまで依頼するケースも少なくありません。この場合は、続けて行う手続きによって費用はまちまちですが、明確に費用設定をしている事務所への依頼を検討した方が後のトラブルを防止することができます。

相続 弁護士費用 具体例のご紹介

また、弁護士への報酬以外に、戸籍謄本の発行手数料、郵送費用などの実費がかかります。

相続人調査が必要な理由

相続人調査が必要な理由については、先述した遺産分割協議の実施も含めて、次のような要素が挙げられます。

  • 遺産分割協議は相続人全員が関与しなければならない
  • 想定していない相続人が存在する可能性もある
  • 相続手続きで必要な戸籍謄本を集める

これらの観点から、相続人調査は必ず必要となるのです。それぞれ詳しく解説します。

遺産分割協議は相続人全員が関与しなければならない

繰り返しとなりますが、遺産分割協議は法定相続人が全員合意しなければ無効です。たとえ一人だけ欠けていた場合でも、全員が揃っていない場合は、遺産分割協議および相続手続きをやり直さなければなりません。なお、法定相続人は次のように定められています。

  • 配偶者(常に法定相続人)
  • 子・孫など直系卑属(第1順位)
  • 父母・祖父母など直系尊属(第2順位)
  • 兄弟姉妹および代襲相続人など(第3順位)

想定していない相続人が存在する可能性もある

「法定相続人は自分たちの家族だけなのだから、わざわざ調査しなくても全員把握している」と思う方もいるかもしれません。しかし、想定していない相続人が存在する可能性もあります。

たとえば被相続人に離婚歴があり、前婚での子どもがいる場合、その子も法定相続人です。かりに数十年前の結婚で生まれた子どもだとしても、法定相続人である限りは遺産分割協議に参加してもらわなければなりません。また、被相続人に隠し子がいる可能性もゼロではありません。
被相続人が結婚しているものの、子も親もいない場合は、配偶者と被相続人の兄弟姉妹(甥・姪)が法定相続人となります。もし被相続人の両親に離婚歴があり、父母一方のみを同じくする「半血兄弟」が存在すると、会ったこともない法定相続人が存在する可能性もあるのです。
このように、家族構成によっては想定以上に法定相続人の範囲が広がるケースも少なくありません。そのため、相続手続きをスムーズに進めるためには、相続人調査によって法定相続人の範囲を把握する必要があるのです。

相続手続きで必要な戸籍謄本を集める

不動産や銀行口座の相続手続きにおいては、相続関係が分かる戸籍謄本一式の提出が求められます。つまり、相続人全員を把握している場合でも被相続人の戸籍謄本が必要となるため、相続手続きを速やかに進めるためにも相続人調査は早めに着手したほうがよいです。

相続人調査の流れ

相続人調査は専門家に依頼せず、自分で行うことも可能です。おおまかな流れを紹介します。

  • 法定相続人の範囲・順位を把握する
  • 必要書類を収集する
  • 被相続人の戸籍情報を調べる
  • 相続関係説明図を作成する

書類を集めることはだれでも可能ですが、戸籍情報を読み解いたり、相続関係説明図を作成したりする作業は、法律に慣れていない方には難しいかもしれません。ここで紹介する作業内容に不安を感じる方は、ぜひ弁護士に相談してみてください。

法定相続人の範囲・順位を把握する

最初に、法定相続人の範囲と順位を確認しましょう。配偶者は常に法定相続人です。しかし、これは法律上の婚姻関係を結んでいる場合に限ります。事実婚(内縁関係)の場合は、法定相続人とはなりません。
配偶者以外の相続人順位は先述したとおり、「子・孫など直系卑属(第1順位)」、「父母・祖父母など直系尊属(第2順位)」、「兄弟姉妹および代襲相続人など(第3順位)」の順番です。被相続人とご家族の状況をふまえ、どの親族が法定相続人となるのか把握しましょう。たとえば、「配偶者はいる、子どもはいない、両親と兄弟は死亡しているが甥が一人いる」というケースでは、配偶者と甥が法定相続人となります。

必要書類を収集する

つづいて、被相続人の出生時から死亡に至るまで、全期間を網羅した戸籍謄本を集めます。被相続人の戸籍謄本を漏れなく収集するには、死亡したときの本籍地で戸籍を取得し、そこから「一つ前の本籍地」を確認し、出生時に遡って戸籍を取得し続けます。なお、戸籍謄本を取得できるのは、戸籍に記載されている直系親族のみです。弁護士など専門職は職権で取り寄せることができます。

被相続人の戸籍情報を調べる

戸籍謄本には、被相続人も含め、その戸籍に入っている者の名前・生年月日・関係などが記載されています。この情報を読み解き、被相続人の相続人情報を確認しましょう。とくに注意すべき記述は次のとおりです。

  • 婚姻・離婚
  • 養子縁組・認知
  • 転籍

たとえば先述した例で考えると、当初は「配偶者あり、子どもなし、両親と兄弟は死亡、甥が一人いる」と思っていたケースでも、戸籍謄本を取り寄せると、数十年前に離婚した配偶者との間に子どもがいると分かるかもしれません。子どもがいることが分かった場合は、配偶者と子どもが法定相続人となります。

相続関係説明図を作成する

戸籍情報を読み解いたら、被相続人と相続人の関係性をまとめた「相続関係説明図(相続人関係図)」を作成します。必ず作らなければならない書類ではありませんが、相続関係を一目瞭然で理解できるため、相続関係説明図があったほうが相続手続きをスムーズに進められます。

相続人調査を依頼できる専門家

相続人調査を依頼できる専門家としては、次の士業が挙げられます。

  • 弁護士
  • 司法書士
  • 行政書士

なお、それぞれの士業ごとに対応できる業務範囲が決まっており、登記などの相続手続きはもちろん、相続人同士の争いまで対応できるのは弁護士のみです。だれに依頼するか迷っている場合は、相続に慣れた弁護士を頼れば間違いありません。

相続人調査を弁護士へ依頼するメリット

最後に、相続人調査を弁護士へ依頼するメリットについて紹介します。これらの点に魅力を感じる方は、迷わず弁護士を頼ってみてください。

  • 相続人を間違いなく把握できる
  • 調査の手間がかからない
  • 相続手続き・相続トラブルまで相談できる

それぞれ詳しく解説します。

相続人を間違いなく把握できる

戸籍の収集は親族自ら対応できるかもしれませんが、法律的な知識がないと「転籍」、「認知」などの情報を見逃し、正しい法定相続人を導けない可能性もあります。また、戸籍謄本は現在デジタル化されていますが、平成6年以前の戸籍謄本は手書きで記述されているため、読み取りづらいケースも珍しくありません。
弁護士など相続人調査に慣れている専門家に依頼すれば、相続人を間違いなく把握できるため、遺産分割協議のやり直しなど後々のトラブルを防げる点は大きなメリットです。

調査の手間がかからない

専門家に依頼すれば、相続人調査に関わる手間がかからないこともメリットの一つです。日本では結婚、離婚、転籍などに伴って新しい戸籍が作られ、さらに時代によっては戸籍様式の変更もあります。そのため、被相続人の死亡〜出生までの戸籍を遡る相続人調査では、想像以上に膨大な数の戸籍謄本を収集するケースも珍しくありません。
仮に兄弟姉妹が相続人になるケースでは、被相続人だけではなく、被相続人の両親の戸籍も死亡〜出生まで遡る必要があり、さらに多くの戸籍収集・調査が必要となります。そして、本籍地を移動している場合は本籍地ごとの役所で手続きしなければならないため、さらに手間がかかります。
相続人の一人が普段の生活を続けながら、このような相続人調査作業にも対応することは大きな負担となるでしょう。相続人としての負担を減らすためにも、相続人調査は専門家に依頼することをおすすめします。

相続手続き・相続トラブルまで相談できる

相続人調査は、あくまでも相続手続きのスタートに過ぎません。法定相続人が定まったら、遺産分割協議を行い、そこから相続手続きを進める必要があります。相続人同士でスムーズに話がまとまればいいですが、財産の分け方を巡ってトラブルになるケースも少なくありません。相続人調査と合わせて相続手続き・相続トラブルまで相談するために、相続が始まったら迷わず弁護士に相談してください。

まとめ

遺言書で財産の分け方が漏れなく指定されていなければ、相続人調査をしなければ相続手続きを進められません。しかし、相続人調査は煩雑な作業が必要で、法律の素人である相続人自らが対応することは負担にもなります。弁護士であれば相続人調査はもちろん、相続手続き・相続人間のトラブルまで対応できるので、ぜひお気軽にご相談くださ